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一刀両断 実践者の視点から【第285回】

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論説・コラム

犯罪の連鎖
 
 《中1同級生切りつけ 校長「安心・安全を約束」》(テレビ新広島)という見出しの記事は、広島市で起こった行為を報じている。刃物を使った犯罪行為を受けて、スイッチが入ったようなケースとも考えられる。
 埼玉県戸田市で起きた事件が報道されると、「自分もやっていいんだ」「やればできるんだ」といった思いに駆られる者は少なからず存在している。このような連鎖は電車への飛び込みやマンションからの飛び降りからも分かるように、最初のニュースは大きく取り上げられるが、二次的な事件は表に出ないし、死因を自死ではなく心不全にされたというケースを私は何件か把握している。
 以前に長崎県内の小学校で同じような殺傷事件があり、校長が記者会見に臨んだが、しどろもどろで哀れに思えた。それを想定して体勢を整えるのが教委の役目なのであるが、それがなされているとは思えなかった。
 教委は校長を守るべきではないのかと、危機管理の中心的な役を果たしていた著名な大学教授に質問してみた。すると「社会のニーズからして校長が答えないとならないでしょう」と、現場を知らないから言える回答をした。呆れた。600人を超える児童を校長が具に把握する事は不可能であり、特異な情報が以前からあれば別だが、事件の起きた夜に記者会見ともなると対応は未熟なものになる。
 今回の場合は、安心安全をと校長が話していて具体性がないと指摘されても、現時点ではそれ以上は言えないだろう。
 繰り返すが、この記事でもスイッチが入ってしまったであろう生徒がある事を認識しておかねば予防対策は後手になる。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)

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