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教育による日本再興論 教育は人と社会と国の未来を決する

14面記事

書評

伊藤 奈緒 著
塾・予備校の経営者による直言

 受験指導を得意とする塾・予備校の経営者による教育論。発行から2カ月で既に5刷。民間教育界からのわが国教育に対する直言は刺激的である。
 著者は、現在の「無理してがんばらなくていい」「これからは好きなことでお金を稼ぐ時代だ」という風潮に強い危機感を抱く。日本を盛り返すためには、人という資源を育てるしかない、日本を牽引できるリーダーを育てていくことが自分の使命であるとし、教育改革の動向や大学入試の変化を踏まえ、根拠を示しながら持論を展開していく。
 例えば、脱・知識偏重教育といわれるが、知識は学力のベースであり、認知能力を高めれば非認知能力も高めていくことができる。AI時代に必要な本質的な資質は母国語リテラシーで、論理的思考力や読解力を高める国語力が大切だが、学校の授業だけでは不足している。注目されているプログラミング教育は一過性のものである。これから身に付けるべきは、AIと共存していくことのできる英語力でよい。また、受験勉強は悪ではなく、目標に向かって努力するというプロセスは大事だなどと述べる。
 受験生や保護者を説得してきた経験からよどみなく解説が進む。公立学校と異なり、特定の希望者を対象とする塾や予備校。日本再興の鍵は教育にあり、教育に投資すべきという点は同じ思いである。
(1760円 IBCパブリッシング)
(大澤 正子・元公立小学校校長)

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