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幸福感に満ちた学校をつくる

18面記事

書評

塚田 昭一 著
教育課題に答え示す経営録

 「校長1年目は様子見」「次の年のことを考えて制御する」という考え方を取らなかった校長の学校経営録である。2年間という短い期間ではあったが、濃密な時間を過ごしたことが分かる。それは小学校理科のスペシャリストとして、あるいは県・市での指導主事、文科省の学力調査官などの経験から得た知見を有し、校長になる以前から練ってきた「学校経営構想案」を携え、着任と同時にアクセルを踏み続けることができたためだ。
 一読すると、仕事にメリハリを生み出せるよう個人的に大事にしたい日を「プレミアム休暇」として設定、年休取得を促進できたこと、授業力の向上を主眼に国立大学附属小学校での研修を可能とする「短期内地留学研修」創設により教員の意欲を喚起したこと、保護者らと協働した全学級副担任制の導入など、新たな仕組みに目を奪われるかもしれない。
 だが、これらの試みもさることながら、むしろ本書が輝きを放つのは、学校現場や教育界で大切だと語られながら、なかなか成果を示せない「教員の意識改革」「教育委員会との密な連携」「地域との協働」など一連の課題への解答が理論と具体によって示されているためではないだろうか。例えば、教員の思いを大切にし、教員自ら改善の先頭に立つ学校へと変えるにはどうするか。特異な実践と受け止めず、ぜひ本書に触れ一緒に考えてほしい。共有すべき実践の知恵にあふれている。
(2310円 東洋館出版社)
(矢)

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