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逆境に負けない 学校DX物語

17面記事

書評

魚住 惇 著
組織観の違い乗り越え改革に奮闘

 学校にとっては降って湧いたGIGA構想。企業のICT化は自明だが、デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)の実現を模索するのは死活問題だからだ。では、急速な変化の波にさらされた学校はどうだろう。『教師のiPad仕事術』を出版した著者は、いわば“意識高い系”の高校教諭。組織観なども異なる教員集団の中で、「学校DX」を目指した奮闘ぶりから現状の一端が理解できる。
 「遅刻欠席早退連絡でWebのフォームを利用」「職員会議資料のペーパーレス化」「Microsoft Teamsの導入」―などが達成された成果だという。達成状況の是非はともかく、実現の道のりは一読に値する。
 文科省が授業や校務でのICT活用を奨励する一方で、学校のICT化、DXがなぜ進まないのかが、具体的に物語られる。教員間のやりとりに“あるある”とうなずくか、抱腹絶倒するか、渋面をつくるか、置かれた学校文化、立場によって異なるだろう。
 校長の一声が良くも悪くもその進捗に大きく影響する。1人1台端末環境世代が進学してくるのに、従来型の指導方法でいいのか。同じ志を持つ仲間を大切にすると局面が打開できる。理想だけでは一足飛びに実現できない…。奮闘した著者の思いが垣間見える。
 あなたの学校に吹く風は、逆風か順風か。小・中・高の違いはあっても、本書は、その風を読む指標になるかもしれない。
(2420円 学事出版)
(矢)

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