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公共施設の4割を占める学校からカーボンニュートラルを

14面記事

施設特集

環境と経済の好循環を生み出す施策を

 現在、わが国では2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、30年度の温室効果ガス排出を13年度比46%削減し、さらに50%の高みに挑戦している。カーボンニュートラルとは、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの「排出量」から、植林、森林管理などによる「吸収量」を差し引いて、合計を実質的にゼロにすることを意味する。
 身近なところでいえば、30年までに家庭やオフィス、工場などすべての照明のLED化を図る政策もその1つだ。家庭での照明器具の消費電力量は、エアコン、冷蔵庫に次いで多く全体の15%程度を占めるが、長寿命なLED電球に交換することで消費電力を抑え、CO2排出を大きく削減する効果がある。すでに各メーカーでは蛍光灯を使った照明器具の生産を中止しており、今後は交換用の蛍光灯電球にも波及していくはずだ。
 大局的には、再生可能エネルギーの導入、エネルギー効率の向上、低炭素技術の開発、森林保全・拡大、地球温暖化対策に関する国際協力などを推進していくことが挙げられる。ただし、こうした脱炭素社会への挑戦が、産業構造や経済社会の発展に寄与し、環境と経済の好循環を生み出すということにつながらなければならない。事実、企業においては環境負荷の低減に貢献することが社会や仕事での信用を高め、生存戦略となる時代を迎えている。そうした点でも、国は積極的な対策を進める企業を支援する政策を強化していく必要がある。

避難所となる学校の再エネ設備導入を支援

 一方、わが国の温室効果ガス排出量のうち、企業に続いて多いのが公共施設となる。とりわけ、学校施設はその約4割を占めており、カーボンニュートラルを実現するためには早期の対策が不可欠だ。
 このため、環境省は来年度の概算要求で温室効果ガス削減の施策に総額約4千億円を計上しているが、その中では意欲的に脱炭素化の取り組みを行う公共団体に対し660億円を支援。加えて、災害・停電時に避難所となる学校など公共施設への再生可能エネルギー設備を導入する支援として40億円を計上している。対象となる設備は、再生エネルギー設備、未利用エネルギー設備、コジェネレーションシステムとそれらの附帯設備(蓄電池や充放電設備、EV等)。補助は、都道府県・指定都市は3分の1、市区町村は2分の1(太陽光発電またはコジェネレーションシステム)、市区町村(地中熱、バイオマス熱等)が3分の2で、期間は25年度までとなる。また、地方公共団体を含む施設のZEB化・省CO2化の普及加速に資する高効率設備の導入支援として、新築・既存建築物のZEB化事業に150億円を新規計上した。

ゼロエネルギー化しやすい学校施設

 昨年の世界での化石燃料の利用で排出される二酸化炭素の量は、前年に比べて1%以上増え、過去最大になった。このままでいけば世界の平均気温の上昇は避けられないばかりか、温室効果ガスを多く排出するエアコンを使う国が増えることで、さらに悪循環が増すことになる。
 となれば、二酸化炭素排出量で世界第5位となるわが国の責任も重くなるが、21年度の温室効果ガスの排出・吸収量を見ても前年度比で2%増加しているなど、カーボンニュートラルへの道程は険しいものとなっている。世界では、企業などが燃料や電気を使用して排出した二酸化炭素に対して課税するなど、法律による規制も始まっている。わが国も温室効果ガスを抑制する取り組みを支援するだけでなく、企業ごとの排出量を「見える化」して促進させるなどの動きも必要かもしれない。
 同様に、学校施設は商業施設と比べれば年間の一次エネルギー消費量が10分の1と低いため、ゼロエネルギー化しやすい建築物といえる。だからこそ、良好な教育環境の確保を図りつつ、温室効果ガス削減の手本となる改修を急いで欲しいものだ。

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