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教室から編みだすフェミニズム フェミニスト・ペダゴジーの挑戦

15面記事

書評

虎岩 朋加 著
現状を突破する力を育てる

 「女子もやってるんだから、男子も頑張れ」。これに類した言葉を聞いたり、発したりしたことはないだろうか。本書では「こうした言動が繰り返されることで、女子生徒の意識にその声が密かに入り込み、次第に自分自身の声になる」と捉える。その結果、他者の物差しで自分を見て、自分の可能性に制限をかけるような「二重意識」が生まれる。
 しかもその日常は、ジェンダー平等と言われる学校現場のはずが「男女は異なる存在だし、同じことはできないし、またすべきでもない」という「不平等のメッセージ」が発せられがちな「二重基準」の上に立脚している。
 男性中心主義的な社会から男女平等がどう目指されてきたか、フェミニズムの歴史を知るとともに、「二重意識」を刷り込まれる女性たちが変えられない「二重基準」にある仕組みの中で、どう突破口を開くか、フェミニズム教育の在り方を指し示した。
 思考に衝撃を受けるような「感覚的な強度」と説明する「情動」によるコミュニケーションを習慣化していく授業を提案した。それは予定調和的な授業ではなく「内面化されてしまった自分を否定する言葉を再生産させない力」や「何か新しいものが生み出されることを可能にする力」などを生み出し、与えるような授業であり、教師の関わりだ。著者の問い掛けに、教室に立つ読者がどう答えるか。聞いてみたくなる一冊である。
(2530円 大月書店)
(矢)

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