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一刀両断 実践者の視点から【第686回】

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論説・コラム

女子中学生の水死

 岡山市内を流れる川で、夕方の時間帯に中学生2人が流され、救助に向かった男性と生徒1人が亡くなるという痛ましい事故が起きた。報道からは、いくつかの要因が見えてくる。
 まず、事故の起きた時間帯と場所。そして、中学2年生という年齢の2人であること。さらに、救助に入った方の年齢なども含め、いくつもの背景が浮かび上がってくる。
 人を助けたいという気持ちがあっても、実際に助けられるかどうかは別だ。特に、目の前で命の危険が迫っている場面では、冷静な判断ができなくなることもある。
 自分が水難救助に関する資格を取ったとき、教官の言葉が今も心に残っている。「まずは何か浮くものを投げろ」「紐のようなものを使ってつかまらせろ」と教わった。実際に水に入る前にできる限りの手段をとれ、という指導だった。それは、救助に向かった人まで命を落とすような共倒れを避けるためでもある。
 今回のような事故は本当に残念だが、富士山の登山などにも同じことが言える。他人の命を巻き込まないという姿勢は、日常生活においても基本であるべきだ。
 楽しい時間の中でも、油断が大きな事故につながることがある。
 生き残った中学生は、どんな気持ちでいるのだろうか。何と声をかけたらよいのか、簡単には答えが出ない。だが、同じような悲劇が繰り返されないことを願うしかない。
 この時期になると、中学2年生の事故が多いように感じる。気のせいかもしれないが、どうしても気になってしまう。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。千葉県教委任用室長、主席指導主事、大学教授、かしみんFM人生相談「幸せの玉手箱」パーソナリティなどを歴任。教育講演は年100回ほど。日本ギフテッド&タレンテッド教育協会理事。)

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