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生徒指導~小学校段階での考え方~【第167回】

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プライド人間にならぬよう

 知っていてもやってしまう。先般の事件で、以前より関わっている大学の教え子達に戸惑いが走った。残忍なそして一番あってはならない犯罪である。長い間教鞭をとってきた専門家がジキルからハイドになったのだからたまらない。
 容疑者は生徒指導関連でも講義をしていたと記憶している。犯罪を未然に防ぐ犯罪心理学の第一人者であったろう。別居中の妻を待ち伏せて強い殺意を持って包丁で刺し殺した准教授である。確かに穏やかな印象はあったが、心が見えなかった。見せないようにしていたのかもしれない。

 専門家や評論家に、犯罪をやりそうな人とやりそうでない人をどう見分けるのかと問いたい。臨床心理士で犯罪心理学を学生に講義している大学の教員ならば熟知しているとも言える。我が身が困った専門家は誰に相談をするのだろうか。プライドが邪魔をして素の自分を出せないプライド人間は、人生の行き先は哀れな結果に陥る。

 この案件を題材にして私なら敢えて授業を展開する。憶測よりも事実から、立場を変えて様々に考え議論するだろう。勿論、無念で亡くなった妻の御冥福を祈りつつも、予防するにはという問いを投げ掛ける。
 うわべの論議にせぬように何度も切り返して、関わったであろう人々の心や行動を洗い出し、我が事として考え、行動する域にまで差し込んでいく。そして、自分に不足している心情や知識を痛感させた後、学びたい意欲に呼応する授業をするのである。
 どうしてもこうした事件には、知識優先の幼稚な人間性が見えてしまう。この欠落を埋めるのが生徒指導の役割と私は自覚している。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)

生徒指導~小学校段階での考え方~