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生徒指導~小学校段階での考え方~【第198回】

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子どもの絵

 子どもは希望そのものであり、未来のリーダーとなる存在である。自然災害が起こると、子どもの存在があればこそ勇気が湧いてくるものである。そう捉えるか、悲壮感に巻き込むかは大人側の心ひとつで変わる事になる。
 しばらく前にドイツの強制収容所へ出向き、地下の壁に描かれた子ども達の絵を見た。その力強い迷いのないタッチに、死への恐怖さえ、この勢いを停められなかったと感じられた。

 大人には子どもを守る本能が本来はある。それは命をつなぐ証だからである。しかし、その幼い命を親が奪う虐待が止まらない。これは教育や政治や社会そして国民性の崩壊を感じさせる現象である。予防策は警鐘を鳴らす程度で何ら具体策が見えない中、悲惨な報道が繰り返される。
 私は親育の為の親塾をやっている。既に手遅れが実感ではあるが、出来ることもある。その殆どは初期段階なら容易く解決できたことばかりである。

 災害時の一時の休息に見せる子ども達の姿が、大人への勇気を呼び起こすことは少なくない。無邪気な笑い声は天使と称される所以でもあろう。この子ども達の目や心に写った映像こそが、本来目指すべき理想の姿なのかもしれない。
 子どもに絵を描く道具を渡せば、道路にも壁にも素敵な絵を引き出すように描き出す。こうした豊かさを人は皆が持っていた。その事実を大切にして忘れないことが、悲惨から抜け出す一助になると私は感じている。ここに引き戻すことが人を素直にする生徒指導の術のひとつなのである。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)

生徒指導~小学校段階での考え方~