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教育現場におけるSNSのマナーとリスクマネジメント【第9回】

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論説・コラム

春を迎えた子どもたちをSNS上のリスクから守るために

 まもなく入学式・始業式ですね。新たな環境への期待と不安に満ちあふれている「新入生」や子どもたちが、とくにこの時期に陥りやすいSNS上のリスクと対策について解説します。

「#春から〇〇(学校名)」にひそむリスク

 3月頃から、TwitterやInstagramなどのSNSのプロフィール文や投稿に「#春から〇〇(学校名)」のようなハッシュタグを付けているユーザーをよく見かけます。大学新入生をはじめ、高校新入生も多いようです。
(※中には入学先だけでなく出身校や在籍していたクラス等の情報までプロフィールに載せているケースも散見され、個人特定につながりやすく危険です)

 「新しい環境で孤独になりたくない」「入学前からSNS経由で友達を作っておきたい」と願う新入生達が、このハッシュタグを通じて「同じ学校の新入生」同士でつながり、入学前から「友達づくり」に生かしているのです。また、新入生以外でもこのハッシュタグを活用しているケースがあります。

 まとめますと、「#春から〇〇」の利用目的・活用パターンは以下4つに分類できます。それぞれにひそむリスクと対策を解説していきましょう。

 (1)新入生が、「同じ学校の新入生」を見つけてSNS上で友達になるために活用する
 (2)在学生/在校生が、サークル/部活への新入生勧誘目的で活用する
 (3)学校側が、新入生への告知目的で活用する
 (4)学生向け物件を扱う不動産業者や、学生向けアルバイト情報を扱う業者等が、新入生への告知目的で活用する

(1)新入生が、「同じ学校の新入生」を見つけてSNS上で友達になるために活用する

 手軽に「同じ境遇の仲間」を見つける手段としてSNSは最適なのですが、「相手の素性がわからない」点は大きなリスクです。端的にいえば、「相手が嘘をついている可能性もある」と考えておくべきでしょう。在学生/在校生が新入生のふりをして「#春から〇〇」と投稿しているケースも多いですし、受験したが不合格だった者や、何の関わりもない第三者が、新入生のふりをしていることもよくあるのです。相手のことばをうのみにしない、「SNSで知り合った相手を信用しない」ことが大切です。

 ハッシュタグをきっかけに連絡を取り、会ったこともない相手を信用した挙句、自分の本名や顔写真、出身地、出身校、居住地域などの個人情報を相手に教えてしまうのもリスクが大きい行為です。より詳細な個人情報を特定されてインターネット上にさらされたり、悪質なコメント/ダイレクトメッセージが届くようになったり、自宅やバイト先、最寄り駅等で待ち伏せやつきまといといった被害を受けたりする危険性があります。また、たとえ相手の素性を確認する目的であっても、直接会うことはお勧めできません。 

(2)在学生/在校生が、サークル/部活への新入生勧誘目的で活用する

 「合格/入学おめでとう!」などと在学生/在校生からコメントやダイレクトメッセージをもらうと、不安に満ちた新入生の警戒心もつい緩みがちですが、ここにも危険な落とし穴があります。親切でやさしい先輩だなと安心しきっていたら、実は「悪質なイベントサークル・マルチ商法・悪質な情報商材販売・カルト宗教」への勧誘が目的だったケースは毎年発生しているのです。また、相手から「関係者限定の別サイトでやりとりしよう」と、出会い系サイト等に誘導されてしまう場合もあり注意が必要です。

(3)学校側が、新入生への告知目的で活用する

 新入生に伝えていただきたいのは、「学校になりすまして連絡してくる偽物も存在する」事実です。ダイレクトメッセージなどで新入生から個人情報を聞き出そうとしたり、フィッシングサイト等有害なサイトにアクセスさせようとしたりするケースがあります。新入生がこうした被害にあわないよう、学校が公式SNSアカウントを持っている場合には、学校の公式Webサイト等からリンクをはっておくことを強くお勧めします。

(4)学生向け物件を扱う不動産業者や、学生向けアルバイト情報を扱う業者等が、新入生への告知目的で活用する

 2022年4月から成年年齢が18歳に引き下げられ、大学には「成年になったばかり(18~19歳)」の新入生が多くいます。国民生活センターの調査によれば、18歳・19歳からの消費者トラブル相談件数は2022年4-10月に5108件発生しているそうです。https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20221130_1.html

 ひとり暮らしをはじめる新成人は何かと購入/契約機会が増えるものです。「#春から〇〇大」ハッシュタグは、悪質な業者からも狙われやすいリスクがあることをぜひ周知いただきたいと思います。

 ここまで挙げたリスクは、すべての子どもたちがいずれは経験する可能性があるものばかりです。先生方や保護者のみなさまにはぜひ、以下メッセージを子どもたちにお伝えいただければ幸いです。

「SNSで知り合った相手を信用しない」
「SNSで知り合った相手と会わない」
「世の中にはうまい話はない」

 年末年始もそうでしたが、春も、卒業/進学/進級をきっかけに子どもたちだけで集まる機会があるものです。違法行為や悪ふざけをしたり、喫煙や飲酒をほのめかしたり、または実際にはしていなくてもしていると誤解されそうなSNS投稿は炎上リスクがあります。炎上すると個人や学校を特定されてデジタル・タトゥーが残り、今後の人生に悪影響が及ぶ危険性があります。「誰かに見られて困る言動はしない・SNS投稿もしない(友人限定でもしない)」ことについても、あらためてご指導お願いします。

教育現場におけるSNSのマナーとリスクマネジメント