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生徒指導~小学校段階での考え方~【第157回】

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歯科検診から見えるもの

 歯科検診が終わると私は記録にすべて目を通した。その記録から、児童一人一人の生活が見えてくるからである。それは、ごまかしのできない生活の履歴書とも言える。
 ある児童は、端正な顔形で服もお洒落にしていたが、虫歯や欠損があまりにひどく、生活習慣や食習慣の乱れが想定された。
 このような場合、治療勧告の手紙を出す事で終えてはいないかと問いたい。

 長年の習慣の累積はこの児童の健康や将来までも左右することになる。ある意味、家庭への介入も必要になる。歯科医のコメントも得た上で保護者に来てもらった。
 保護者もほとんどまともな歯がないことが分かった。呼ばれた理由を聞くと、「歯科医へ行けばいいんでしょ」と開き直った。これで終わらせては、また繰り返すことになる。

 丁寧に保護者の生育などを聴きながら、この状況になった背景を理解し、それが及ぼす影響や価値観の改善を何回かに分けて助言することにした。
 習慣の改善には、それ相当の時間を要する。数年後、親子で治療を終え素敵な笑顔を見せに来てくれた。これも養護教諭や担任からの相談から始まった。
 生徒指導とはこのエリアまでも含むと私は思っている。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)

生徒指導~小学校段階での考え方~