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はじめて学ぶドイツの歴史と文化

14面記事

書評

南 直人・谷口 健治・北村 昌史・進藤 修一 編著
国民性の背景たどるのも一興

 「勤勉実直な国民性の類似点がある」と、中学で教えられたイメージのまま、ドイツを訪問し、目に飛び込んできたのは、多民族、広い高速道路、風力発電、そして落書きが印象的だった。風土や食べ物が違うが、感性の近さを感じた。ドイツは地震がないため大規模な石の建造物が多い。また、住宅風景が東西の経済の違いを象徴している。ドイツ人は、ヒトラーにだまされたのかと子どもに直接聞くといい。臆することなく大人顔負けの対話が成立するから驚く。
 14章に分けられたドイツの歴史と文化の基礎を読んでみると、つながって答えが浮き上がってくる優れた構成になっていて、グイグイと引き込まれる。ここまでの知識を得てドイツに訪れていたなら、行き交う人々や景色さえも違って見えたことだろう。東西を遮る壁がなぜ一夜でできたのか、壁の崩壊がどのような背景で起きたのか。さらに難民受け入れなど、日本では理解し得ない歴史が本書の中で明快になる。
 違いは、子どもたちが自国に自信を持っているということである。原発への対応においても現在のドイツは、EUをさまざまにリードしている。日本の子どもにはアジアをリードしている自負があるだろうか。多様な教育制度が存在するドイツ、いじめも毎日のように起きているが解決は極めて速い。なぜか。
(3520円 ミネルヴァ書房)
(大久保 俊輝・亜細亜大学特任教授)

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