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つながりをつくる10のしかけ

14面記事

書評

上條 大志 著
子どもの違いを大切にする学級経営論

 目の前の子どもを軸にした学級経営論について語った一冊である。子どもの実態が異なる学級で成功したノウハウよりも、必要な考え方、原理に重点を置く点に特色がある。実践に裏打ちされた著述は、説得力を感じる。
 本書の核となるのは第2章「つながりをつくる10のしかけ」だろう。「しかけをつくる」とは教師の意図的なアプローチのこと。「意図的」の裏側に著者の考え方がある。
 例えば「『ミカタ』をみがく」は子どもの「見方」を磨いて、子どもの「味方」になっていくことを大切にする。子どもの「見えている事実」よりも「見えない真実」、子どもの苦手に寄り添い、指導・支援できるために「見方」を磨くと説明する。「『カイ』をかくす」は「教師の解」を押し付けず、子どもの「自己決定」を促す。その後を生きる力の育成でもある。
 「教師が子どもとつながること」「子どもと子どもをつなげること」を大切にした学級経営の在り方を提示した第1章や、目指す学級づくりに向け各時期に必要なつながり、そのための考え方、場面での取り組みを示した第3章を重ね合わせると、理解はより深まる。
 「つながり」を大事にする著者のまなざしの根底には特別支援教育、心理、福祉などを学ぶことで視野を広げ、子ども一人一人の家庭的背景、成育歴の違いを受容する姿勢がある。読者それぞれの「学級経営ストーリー」を描くための“理論書”といえよう。
(2090円 東洋館出版社)
(矢)

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