ラーニング・コモンズとは? 学校図書館で実現する主体的・対話的な探究学習
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学習指導要領の改訂などに伴い、学校教育における学びの形は、教師から学生に知識を伝達するだけの従来のものから、「主体的・対話的で深い学び」へとシフトが進んでいます。
このシフトに伴い変化しつつあるのは、教室での授業風景だけにとどまりません。学校図書館も、多様な情報資源を活用することで新たな価値を創造する場所へのアップデートが求められています。
本記事では、GIGAスクール時代に求められる新たな学校図書館像である「ラーニング・コモンズ」の概要をご紹介します。
ラーニング・コモンズとは
ラーニング・コモンズの概念を端的に表すと、学生が能動的学習(アクティブ・ラーニング)を行うための空間のことです。※
文部科学省では、大学図書館におけるラーニング・コモンズを次のように定義しています。
複数の学生が集まって、電子情報も印刷物も含めたさまざまな情報資源から得られる情報を用いて議論を進めていく学習スタイルを可能にする「場」を提供するもの。
引用元:文部科学省『用語解説』
ポイントは、「それらを使った学生の自学自習を支援する図書館職員によるサービスも提供する」としている点です。
従来の資料を探したり、本を読んだりするだけの空間から、もう一歩踏み込んだ総合的な学びの場としての活用が期待されています。
※能動的学習(アクティブ・ラーニング):教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり、学習者の能動的な学習への参加を取り入れた教授・学習法の総称
出典:文部科学省『用語解説』『アクティブ・ラーニングに関する議論』
ラーニング・コモンズが求められる背景
2023年に閣議決定された第4期教育振興基本計画では、今後の教育に関する基本的な方針として、次の点を掲げています。
▽第4期教育振興基本計画で掲げられた方針
・グローバル化する社会の持続的な発展に向けて学び続ける人材の育成
・誰一人取り残されず、全ての人の可能性を引き出す共生社会の実現に向けた教育の推進
・地域や家庭で共に学び支え合う社会の実現に向けた教育の推進
・教育デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進
印刷物はもちろん、電子情報などの情報資源を用いて議論を進める学習スタイルを実践できる場所を提供するラーニング・コモンズは、「探究的な学び」を支えたり、「情報活用能力」を育んだりする拠点としての機能を期待されていることが推察できます。
出典:文部科学省『第4期教育振興基本計画【概要】(令和5年度~9年度)』『新しい時代の学びに対応した学校施設の在り方について』
ラーニング・コモンズを構成する3つの要素
学校図書館を効果的なラーニング・コモンズとして再構築するには、「物理的環境(スペース)」「ICT環境(リソース)」「人的支援(サポート)」という3つの要素が必要になります。
ラーニング・コモンズを構成する3つの要素の概要は、以下のとおりです。
物理的環境(スペース)
ラーニング・コモンズに求められる役割は、従来の「図書館」としての役割だけにとどまりません。読書センターや学習センター、情報センター、交流センターなど、さまざまな活動拠点としての場所を提供することが求められます。
▽ラーニング・コモンズで推奨される空間づくり
・学校図書館やコンピューター教室、多目的スペース、学習室などの一体的・連続的な配置
・グループ学習や多用途に利用できる自習室
・さまざまな空間や家具が用意され、その日の学習内容に応じた場を選ぶことができる など
そのため、ラーニング・コモンズとなる図書館を中心とした一体的な空間づくりが必要になります。
出典:文部科学省『新しい時代の学びに対応した学校施設の在り方について』
情報・ICT環境(リソース)
「令和の日本型学校教育」では、ICT(情報通信技術)を活用して「個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実を図る」ことが掲げられています。
1人1台端末を活用して円滑に学習を進めるための環境整備も、ラーニング・コモンズに求められる要素のひとつです。
具体的な例としては、多機能なICT機器やデジタル資料を活用できる環境の整備、タブレットやホワイトボードなどを用いた協同学習スペースの用意などが挙げられます。
また、従来の図書館の機能は紙の書籍や資料の保管・提供が主でしたが、ラーニング・コモンズでは電子書籍やオンライン上のデータベースといった、多様な情報源にアクセスできる環境整備も不可欠です。
出典:文部科学省『新しい時代の学びに対応した学校施設の在り方について』『「新しい時代の学びを実現する学校施設の在り方について」 中間報告【概要】』
人的支援(サポート)
施設や設備の充実と同時に、ラーニング・コモンズの要となるのが、学生の学びを支援するスタッフの存在です。文部科学省も、ラーニング・コモンズの要件のひとつとして「学生の自学自習を支援する図書館職員によるサービスを提供すること」を示しています。
ある大学のラーニング・コモンズでは、院生スタッフによる学習サポートデスクや、教員によるレクチャーシリーズなど、従来の図書館では珍しい取り組みを実施。さまざまなイベントを実施することで、単なる学習の場ではなく、人的交流や相談の場としても機能しています。
出典:文部科学省『用語解説』
「学びの中心地」としての活用が期待されるラーニング・コモンズ
従来の図書館とは異なり、ラーニング・コモンズは単に紙の書籍や資料を提供する場ではありません。ラーニング・コモンズに求められるのは、ICT機器や学習スペースなどを提供し、学生の「知りたい」「創りたい」という願いを支えるための場として機能することです。
また、学生の学習を支援するだけではなく、多目的スペースや自習室といった場を提供することで、人の交流場所としての機能も備えています。
ラーニング・コモンズが多様な「学びの中心地」として、学校教育を支えていくことが期待されます。

