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海のサーキュラーエコノミーから日本の未来を探究する【第1回】海洋ごみ問題の本質とAFB設立の背景

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企画特集

 高校で進む「探究学習」は、社会と結びついた実践的な学びを重視する一方、学校だけで適切なテーマを設定する難しさが指摘されている。こうした中、日本教育新聞が探究テーマとして提案するのが、海洋環境問題を循環型ビジネスで解決する取り組みだ。そこで、本事業を推進する一般社団法人ALLIANCE FOR THE BLUE(AFB)の野村浩一代表理事に、環境と経済を両立させ、海の価値を次世代へ継承する新たな社会モデルとは何かについて聞いた。

海のサーキュラーエコノミーから日本の未来を探究する
~美しく恵み豊かな海を次世代に継承する、循環型ビジネスを学ぶ~
【第1回】海洋ごみ問題の本質とAFB設立の背景

 海洋ごみ問題の解決に、企業連携による「資源循環」という新たなアプローチで挑むのが、AFBだ。本シリーズでは、同団体の取り組みを通して、海の課題から日本の未来、そして高校の探究学習への可能性までを探る。

廃漁網をリサイクルして商品化した学生鞄を紹介する野村浩一代表理事

―まず、AFBはどのような経緯で設立されたのでしょうか。

 海のプラスチックごみは、街から出る一般ごみと、漁業など産業由来のごみに大別されます。特に漁網・ロープはその扱いの難しさから大きな課題となっており、これに対処するためにはサプライチェーン全体(製造・販売・流通)を巻き込んだ協力体制が不可欠です。この課題意識のもと、「恵み豊かな海を次世代に継承する」ことを目的に、日本財団の声がけのもと、海ごみ問題の解決に積極的に取り組む企業アライアンスを形成する組織として設立されました。

―実際に、海洋ごみ問題はどのくらい深刻なのですか。

 世界の海では、いま深刻な環境問題が進行しています。海洋ごみの増加、藻場の減少、生態系の変化、これらは日本の海でも確実に進んでいる課題です。海洋プラごみは、2014年の311百万トンから2050年には1,124百万トンに達すると予測されています。しかも、一旦海に流出したプラスチックは分解に600~800年かかるといわれているため、このまま増え続けていくと、海のプラスチックごみが魚の量を上回ってしまうかもしれません。この問題を解決するためには、流出する前に回収し、適切にリサイクルすることが重要になっています。

◆増え続ける海洋プラごみ

*下記よりAFBにて和訳・作図
出典:ELLEN MACARTHUR FOUNDATION. https://www.ellenmacarthurfoundation.org/
THE NEW PLASTICS ECONOMY RETHINKING THE FUTURE OF PLASTICS

―その中で、廃漁網の資源循環に焦点を当てた理由は。

 海洋ごみの6割を占めているのが漁具・漁網であり、その原因には「資源の使い捨て構造」があると考えています。また、海に流出した後に回収するのはコスト面でも現実的ではありません。環境保全と経済合理性を両立させるには、ごみを減らすだけではなく、資源を循環させるという発想への転換が重要になります。
 また、社会的には、海ごみの問題と並行して、プラスチック資源の循環利用、つまりサーキュラーエコノミーの構築に向けて、さまざまな動きが進んでおります。特に、自動車や建築、またアパレルの業界では、リサイクルにより作られた素材(リサイクル材)への代替利用が、政策的にも市場ニーズからも、強く求められています。これは、廃漁網由来のリサイクル材が求められるチャンスが訪れていることを意味します。
 そこで私たちは、廃棄物となる漁網・フロートを資源とし、社会の大きな資源循環に向けて、付加価値のある素材や商品、サービスとして提供する仕組みづくりに注力することにしました。
 実際には、日本で使われる漁網は、形状や素材の種類が多く、また島国であるがゆえに全国津々浦々に広く存在します。リサイクル事業を成立・継続させるには、回収や輸送のコスト、リサイクル材としての品質の担保、原料や素材としての供給安定性などが主な課題となります。これらの課題について、海ごみの削減を共通目標とするさまざまな企業の協働により、技術開発や新しい仕組みの構築などに取り組んでいます。

◆海ごみの分類

*環境庁:「海洋ごみをめぐる最近の動向」より

―もう一つの柱として、「藻場(もば)の再生」にも取り組んでいますね。

 藻場は海のゆりかごとも呼ばれ、魚介類の産卵や生育に欠かせない存在ですが、近年は全国的に減少が続いています。AFBでは、参加企業の商品売上の一部や寄付を活用し、奄美大島での藻場再生活動を支援。地域の漁業者や自治体と連携しながら、生態系の回復と漁業の持続に取り組んでいます。こうした取り組みは、単なる環境保全活動にとどまりません。企業、自治体、漁業者、生活者がそれぞれの立場から関わり、社会全体で海を守る仕組みをつくり出している点に大きな意義があります。

*水産庁ホームページ:「藻場の働きと現状」より

―子どもたちに海への理解と関心を育てる活動について教えてください。

 海の課題を将来世代に伝えるため、子どもたちを対象とした教育・啓発活動「EDUCATION for the BLUE」にも力を入れています。
その一つが、海ごみ問題や藻場の大切さを、子どもたちが楽しく学べる「デジタル環境絵本(2作品)」です。これは、協働企業の株式会社アイフリークモバイルと共同制作したもので、当社ホームページならびに、アイフリークモバイルが運営するYouTubeチャンネル「ポポキッズ」にて配信しています。本作は、小さなお子さんでもわかりやすく、海ごみを出さない工夫やそれらを資源として再活用することの重要さ、海の森と呼ばれる藻場の役割を学びながら、海や自然、未来を思いやる心を育んでいただける内容になっています。
 コロナ禍に、教育現場の先生方と協働で子ども向け教材として開発したのが、教科と海を横断的に学ぶ学習ドリル「ウミドリる」です。国語・算数・理科・社会の内容を海と関連付けながら学べる構成となっており、小学4~6年生を主な対象としています。協働プロジェクトに参加する企業各社が従業員の家庭に配布するとともに、友人や地域社会へと広げ、ウェブサイトを通じて多くの家庭で活用していただけるよう展開しています。
 また、協働企業さんが主催される、実体験を重視した取り組みへのサポートなども行っています。マリングッズを多く提供されるヘリー・ハンセンさんが行う「KIDS OCEAN SCHOOL」。海という大きなフィールドを舞台に、カヌーやヨットなどの活動を通じて、波や風といった自然の力を体で感じながら学ぶプログラムの中に、海ごみの実態や解決の方法を学ぶ講座を提供させていただきました。
 そして、私たちは、知識として海を理解するだけでなく、「好きになる」「大切にしたいと思う」という感情を育てることが、将来の行動につながると考えています。教材による学習と体験活動の両輪によって、子どもたちが海と自分の生活とのつながりを実感し、持続可能な社会の担い手として成長していくことを期待しています。

 本企画は、一般社団法人ALLIANCE FOR THE BLUE(AFB)と日本教育新聞が連携し、企業のサーキュラーエコノミーにおける先駆的な取り組みを中心に、本サイト内で順次ご紹介していきます。次世代を担う生徒たちの探究学習を豊かにし、持続可能な社会の実現に向けたヒントとなる情報を発信してまいります。学校現場での探究学習の題材として、ぜひ本連載をご活用ください。

一般社団法人ALLIANCE FOR THE BLUEとは
公益財団法人日本財団とのコラボレーションにより2020年1月に設立。恵み豊かな海を次世代に継承するために世界的に深刻化している海洋環境問題に対して、企業間で連携した対策モデルを創出する業界横断のプラットフォーム。「商品づくりを通じた海ごみ問題解決」や、その売上の一部や寄付を通じた「持続可能な藻場の再生モデルの構築」を目指し、バリューチェーンを跨る業種の異なる企業や、地方自治体、漁業関係者など約80の企業・団体と協働し、活動を推進しています。

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