動画教材を活用しながらこれからの日本の発電について考える授業
13面記事
横須賀学院小学校の取り組み
電気は私たちの生活に欠かせないもの。しかしながら、日本は発電に必要な資源に恵まれているとはいえない。神奈川県の横須賀学院小学校(山口旬・校長)で理科を担当する鈴木桂教諭は、この点に着目。子どもたちが日常的に使う電気に興味を持ち、自ら考えるきっかけにしてほしいという思いから、これからの日本の発電を考える授業を行った。子どもたちが自分の意見を持つためにどのような授業が行われたのか。その取り組みの様子を取材した。
発電の仕組みと特徴を学び、エネルギーについて自分の考えを深める授業
これまでの授業では、理科の実験などを通して、電気のつくり方や身の回りの電気の利用といった電気の基礎を段階的に学んできたという。今回の授業は全10時間のうちの第6時間目にあたり、様々な発電方法の仕組みやそれぞれのメリット・デメリットを理解した上で、最もよいと考える発電方法について自分の考えをまとめることが目標。
授業の冒頭では、鈴木教諭が「いろいろな発電所があるが、どんなイメージを持っている?」と問いかけると、子どもたちからは、「火力発電は環境に悪い」、「原子力発電は事故が心配」、「水力発電が一番いいのではないか」といった声が挙がった。
続いて、電気事業連合会が制作した動画教材「電気ができるまで~いろいろな発電の仕組みを見てみよう~」(文部科学省選定【2025年12月】)を視聴。映像では、火力・水力・原子力・太陽光・風力発電といった各発電方法の仕組みがアニメーションで分かりやすく紹介され、それぞれのメリットやデメリットも解説された。例えば「火力発電は二酸化炭素を排出する一方で安定した発電が可能」「水力発電は燃料を使わないが、ダム建設が自然環境に影響を与える」「原子力発電は少ない燃料で大量の電気を生み出せるが、事故のリスクという課題がある」「太陽光発電や風力発電は発電時にCO2を排出しないが、天候に左右されやすい」といった特徴が示された。子どもたちは新たな気づきもあった様子で、驚いたりしながら意欲的に動画を視聴していた。また、動画教材に付属するワークシートを活用しながらメモを取り、自分の考えを整理する姿も見られた。

動画を視聴する子どもたち

各発電方法の仕組みをアニメーションで分かりやすく紹介
ICTの活用でクラス全体の回答を可視化
授業の後半では、鈴木教諭から「どの発電方法もいいところと悪いところがある」と解説した上で、どの発電方法が最もよいと思うか、そしてその理由を考える時間が設けられた。この質問に対し、子どもたちはタブレットから回答。クラス全体の回答は、ICTの集計ツールによってすぐにグラフや一覧表として可視化され、他の児童がどのような意見を持っているのかが分かるようになっている。
子どもたちが最もよいと思った発電方法は、水力、原子力、風力、太陽光などに分かれた。選択の理由は「CO2を排出しないこと」「安定して電気を供給できるか」「事故のリスク」といった様々な観点が挙げられており、動画で得た情報をもとに自分なりの考えが導き出されていた。また、「最もよいと思う1つを選んだが、複数の発電方法を組み合わせるとよいのではないか」という回答もあった。学習前は印象に基づく記述が目立ったが、学習後は授業で学んだことを活かして、「火力発電なら発電量を調節できるが、外国と仲が悪くなったら使えなくなるので、水力発電も選んだ」など、複数の観点を組み合わせて説明する記述も増えており、電気やエネルギーについての自分の考えを深めることができた様子であった。
鈴木教諭は、「『最もよい発電方法は何か』という答えのない問題を考えるには、理科だけではなく、データを読む力、技術や工学の視点、さらに様々な知識や意見をもとにするといった学習が必要でSTEAM教育にもつながる。その学習の一環として、今回使用した動画教材は、各発電方法のよい点と課題がシンプルにまとめられていたのがよかった。動画を見て興味を持った点や疑問点を、AIなども活用しながら調べる使い方もできそうだ」と授業を振り返った。

鈴木桂 教諭
電気ができるまで~いろんな発電の仕組みを見てみよう~
https://fepc.enelearning.jp/teaching/electricitybasics/
中学校地理・公民向け動画教材2本が新たに登場
電事連のエネルギー・環境教育支援サイト「ENE-LEARNING(以下、「エネラーニング」)」では、中学校の地理・公民の授業で活用できる探究型教材2本が新たに公開された。
「探究!どうする日本のエネルギー」(約13分)は、中学校地理「日本の地域的特色と地域区分」に準拠した教材だ。日本が直面する「資源の安定確保」と「CO2の排出量削減」を同時にどう解決していくのかをテーマに、各発電方式の特徴を踏まえながら、これからの発電のあり方を考える構成になっている。
もう1つの「ニュースで学ぶ!気候変動と資源・エネルギー問題」(約12分)は、中学校公民「世界平和と人類の福祉の増大」に対応。日本が掲げる2050年のカーボンニュートラルを題材に、その実現に向けた日本のエネルギー政策について学ぶことができる。ニュースと授業をつなぐ切り口で、将来の日本の電源構成を考え、探究する内容となっている。
いずれも文科省選定(2026年2月)を受けているほか、無料で利用でき、指導案・ワークシートもセットで用意されているので、すぐに授業で活用できる。授業の準備を省力化し、生徒が主体的に考える場を提供する教材として、ぜひ活用してみてはいかがだろうか。

「ニュースで学ぶ!気候変動と資源・エネルギー問題」
https://fepc.enelearning.jp/teaching/climateenergy/

「探究!どうする日本のエネルギー」
https://fepc.enelearning.jp/teaching/japanenergy/
原子力発電の燃料のリサイクルを学ぶ新作教材
「エネルギーの資源篇」を公開
電事連は、エネルギーについての理解を深める動画教材シリーズ「エネルギーアカデミー」の新作として、「エネルギーの資源篇」を公開した。これまでの「エネルギーの歴史篇」「探究篇」に続く第三弾であり、中学校理科の授業で活用できる内容となっている。

専門家へ取材し、ウラン燃料のリサイクルを学ぶ
「エネルギーの資源篇」では、監修者の金田武司氏とエネルギーアカデミーの生徒たちが専門家を訪ね、インタビュー形式でエネルギー資源や原子燃料サイクルの仕組みを学んでいく。生徒たちが率直に疑問を投げかける場面も多く、視聴者も一緒に授業に参加しているような感覚で理解を深められる構成だ。
約18分の動画は「燃料のリサイクルって?」「リサイクルできない部分はどうするの?」の2テーマで構成されている。使い終わったウラン燃料を再び利用できるようにする「再処理」の仕組みや、どうしてもリサイクルできない部分の処分方法について、現地の映像やイラストを交えてわかりやすく紹介している。
エネルギー資源に乏しい日本にとって、今ある資源をどのように有効に活用するという視点が全編を通して示されている。

専門性のある内容をわかりやすく説明
エネルギー資源の利用には多様な考え方があり、生徒が自分の意見を持ちやすいテーマでもあるが、具体的な内容は専門性があり、授業で取り扱うのはなかなか難しい。本教材は、重要でありながら難しい内容も多い原子力発電の燃料のリサイクルについて平易にわかりやすく伝える構成となっており、生徒たちがエネルギーについて考える一助となりそうだ。
また、中学3年生理科「科学技術と人間」の単元でそのまま使える学習指導案やワークシート、動画の内容を補足する資料も公開されており、授業の目的に応じて柔軟に活用できる点も特徴だ。なお、本教材は文部科学省選定(2025年11月)も受けている。
電事連は「本教材が、原子力発電の燃料のリサイクル(原子燃料サイクル)やどうしてもリサイクルできない部分(高レベル放射性廃棄物)の処分方法の理解に繋がり、日本のエネルギー資源のあり方について、自分なりの意見を持つきっかけになれば」とコメントしている。
エネルギーアカデミー「エネルギーの資源」篇
https://fepc.enelearning.jp/teaching/energyacademy/
エネルギー・環境教育のポータルサイト ENE-LEARNING(エネラーニング)
電事連では、エネルギー課題への理解を深めるエネルギー・環境教育支援サイト「エネラーニング」を運営している。本サイトでは、動画教材をはじめ、小・中学校の理科・社会科や総合的な学習の時間で活用できる多様な教材を無料で提供している。指導案やワークシートも充実しており、忙しい日々の授業準備の強い味方となるはずだ。
今回紹介した教材以外にも、小学生向けの教材として、イラストやアニメーションを用いて、電気や電気をつくる仕事について学ぶパワーポイント教材「住みよいくらしを支える電気」、水族館や野菜工場、電気バスなど毎日の生活や社会活動と関わりのある様々な事例を通じて、電気の役割やSDGsとの関連性を学ぶことができ「THEPOWEROFELECTRICITY」、小学校で必修化されているプログラミング教育のための「電気で学ぼう!プログラミング」などが用意されている。
このほかにも、配布資料の作成や板書に役立つグラフ・イラスト素材、授業で活用できる教材・資料を提供するサイトなども紹介している。エネルギーをテーマとした授業をお考えの先生方は、ぜひ一度サイトをのぞいてみてほしい。
電気事業連合会 エネルギー・環境教育支援サイト
『ENE-LEARNING』(エネラーニング)
https://fepc.enelearning.jp/

