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能力社会から共同体自治へ 競争と排除を乗り越える教育と福祉実践

16面記事

書評

荒井 和樹 著
若者追い込む「成果偏重」批判

 若者支援は今や全国的な課題となっている。こども家庭庁による若者調査や居場所づくりの推進、就職、結婚といったライフデザイン支援の広がりは、その象徴だ。評者の関係する自治体にも若者支援センターが設置されている。
 本書は、NPO法人「全国こども福祉センター」の活動を軸に、現代の若者が抱える「生きづらさ」の背景を描き出すものである。著者は同NPO法人の理事長で、大学准教授でもあるが、若者を追い詰めている根本要因として、「コスパ」に象徴される成果偏重の「能力主義」を鋭く批判する。
 第1章では、児童福祉の現場にまで浸透する能力主義の実態を示し、第2章ではNPO法人の運営における助成金申請の負担や評価指標の問題を取り上げる。第3章では、若者との交流実践を通して支援の難しさと向き合い、第4章では能力主義を乗り越えるための提言を提示している。
 多くのNPO法人が助成金や受託事業に依存する「事業型」である中、著者の団体は会費や寄付を基盤とする「慈善型」へとかじを切った。そこには、能力主義から距離を置き、共同体そのものを変えていくという強い意思がある。「脱成長」「反自立」「反発達」といった主張は、教育現場では当たり前とされてきた価値観の逆だ。こうした発想の転換もむしろ必要な視点なのかもしれない。
(1980円 せせらぎ出版)
(中村 豊・公益社団法人日本教育会特別参与)

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