避難生活の質を左右する衛生的で尊厳のあるトイレ環境を
10面記事
令和8年2月に設置された南吉井小学校のマンホールトイレシステム
愛媛県東温市 積水化学工業「防災貯留型トイレシステム」導入事例
南海トラフ地震など大規模災害への備えとして、愛媛県東温市は避難所となる小中学校にマンホールトイレの整備を進めている。ライフラインが途絶した状況でも衛生的な環境を維持することを目的に、段階的な整備と運用体制の構築を一体で推進している点が特徴だ。
「避難所整備強化事業」として小学校3校で整備完了
東温市がマンホールトイレの導入に踏み切った背景には、災害時の深刻な「トイレ問題」への危機感がある。大規模地震で上下水道や電力が停止すれば、学校に備え付けられたトイレは使用できなくなる可能性が高い。避難生活が長期化すれば、衛生環境の悪化や健康被害、さらには避難者の尊厳の低下につながる恐れがある。
こうした課題に対応するため、市はマンホールトイレを整備し、災害時でも一定の衛生水準を確保できる体制づくりを進めている。今回の整備は「避難所整備強化事業」の一環であり、飲料水兼用耐水性貯水槽(40トン)や体育館空調設備の設置と併せて実施された。
令和7年度には第一段階として、小学校3校で整備が完了。令和9年度以降は対象を広げ、令和14年度までに中学校2校、小学校4校へと段階的に導入する計画だ。
汚水を一定期間貯留できる「防災貯留型トイレシステム」
導入されたのは、積水化学工業の「防災貯留型トイレシステム」になる。このシステムは、使用時に仮設トイレ用の管路に水をためて臭気を抑え、1日1回貯留槽の弁を開放して汚水を一括放流する仕組みを採用している。これにより、衛生的で効率的な運用が可能となる。
さらに、下水道本管が被災した場合でも汚水を一定期間貯留できる点が大きな利点だ。洗浄水には学校のプール水をポンプで汲み上げて使用する想定で、限られた資源を有効活用できる設計となっている。
トイレはマンホール上に設置するユニット型で、1校あたり5基を設置可能。そのうち1基は車椅子利用者に対応したユニバーサルデザイン仕様である。避難所での生活が長期化した場合は、事前協定を結んだ汲み取り業者が対応する体制も整備されている。
訓練を通じて「使える状態」を維持する
設備整備と並行して、運用面の強化にも取り組んでいる。今年8月末の総合防災訓練では、整備済みの小学校を会場に、自主防災組織と連携した設置訓練を実施する予定である。
同市総務部危機管理課の川崎航主事は、「設備を整備するだけでなく、実際に使える状態にしておくことが重要。住民と行政が一体となって訓練を重ねることで、いざという時の対応力を高めていきたい」と語る。
災害時のトイレ対策は、これまで後回しにされがちであったが、近年は避難生活の質を左右する重要な要素として注目されている。中でも、衛生的で尊厳を保てるマンホールトイレの整備が進むことは、住民の安全・安心を支える基盤になるものだ。
