高等学校で求められる「デジタル人材育成のための環境改善」
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社会で通用する、より実践的な学びを支える環境が求められている
学校施設の改修では、温熱・光・音・空気といった基本性能の改善に加え、ICT活用や探究学習の拡大など、新しい時代の学びに対応した学習空間づくりが求められている。こうした環境改善の流れの中で、特に高校では、わが国で不足するデジタル人材育成を見据えた施設整備が重要なテーマとして浮上している。
高等学校は、大学・専門学校・就職へと進む前の「基礎力形成の最終段階」であり、社会のデジタル化に対応するための学びを支える環境整備が急務となっている。学校施設の改修においても、次のような観点が不可欠になっている。
1.ICT活用を前提としたインフラ更新
「情報Ⅰ」の必修化により、プログラミング・データ分析・情報デザインなどの学習が全員に求められるようになった。これを支えるためには、高速・大容量のWi―Fi環境、教室内の電源増設・充電設備の整備、電子黒板や大型提示装置の常設、クラウド教材を前提としたネットワーク設計など、基盤整備が必要となる。今やICT環境の整備は、利便性向上だけではなく、高校教育の必須条件となりつつある。
2.探究学習に対応した可変型教室への改修
「総合的な探究の時間」が拡充される中で、従来の一斉授業型教室では対応しきれない場面が増えている。グループワーク・発表・個別学習を切り替えられる空間、ICTとアナログを併用できるワークスペースといった空間を整備すれば、デジタルスキルと探究スキルを同時に育てる“学びの器”として機能する。
3.デジタルなモノづくり環境整備
社会での実装や価値創造につながる、より実践的な学びを支える環境が求められている。プログラミング・データ分析用の演習室、映像制作やデザイン制作のためのメディアスタジオ、ロボット・IoTを扱えるミニ・メイカースペース、3Dプリンタや小型加工機を備えた創作スペースなど。これらは、普通科・総合学科・専門学科を問わず、デジタル時代の基礎力を育てる場、デジタルなモノづくりを実践できる場として重要性が高まっている。
改修の追い風となる「N-E.X.T.ハイスクール構想」
こうした高等学校の環境改善を後押しする政策として、文科省は2025年度補正予算で約3千億円を計上し、1都道府県あたり約62億円を上限に補助する「N-E.X.T.(ネクスト)ハイスクール構想」を打ち出した。
この構想は、デジタル人材育成に対応した学習空間の整備、探究学習・PBLを支える可変型教室の整備、ICTインフラの高度化、地域・大学・企業とつながる学びの推進といった取り組みを包括的に支援するもので、高校改革の実行力を高める強力な財政措置となる。
具体的には、都道府県が基金を活用し、地域の経済社会を支える理系人材や産業イノベーション人材の育成に向けたパイロットケース(先導的な取組)を創出し、その成果を域内の高等学校へと普及させていく仕組みとなっている。
つまり、従来のGIGAスクール構想やDXハイスクール事業がハード面(設備・インフラ)に焦点を当てていたのに対し、本構想は、その端末をいかに使って「教育の質」を高めるかというソフト面・教育内容の変革に重点を置いているのが特長だ。
このように学校施設の改修は、老朽化対策にとどまらず、社会につながる学びを実現するための投資へと位置づけが変わりつつある。「N-E.X.T.ハイスクール構想」は、その変革を加速させる大きな契機となる。
