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各大学の個別選抜改革 3方針策定を義務付け

12面記事

高校

29年以降、入試に反映

 平成26年12月の高大接続改革に関する中央教育審議会の答申後、文科省では今年1月、高大接続改革実行プランを策定。さらに改革を実現するため、有識者から成る高大接続システム改革会議が発足して、「高等学校基礎学力テスト」(仮称)や「大学入学希望者学力評価テスト」(仮称)などの新テストの創設、各大学の個別選抜の改革、高校教育や大学教育の改革などについての審議を始めた。夏ごろまでに中間的まとめを、年内に最終報告をまとめる予定という。「今回はわが国の世界で活躍する人材を育てるラストチャンス」と下村博文文科相は初会合で審議の行方に期待した。スケジュール的には、平成31年に「高等学校基礎学力テスト」、32年に「大学入学希望者学力評価テスト」の導入を目指す。直近では各大学における入試改善がある。本年度中にアドミッション・ポリシー(入学者受入の方針)、ディプロマ・ポリシー(学位授与の方針)、カリキュラム・ポリシー(教育課程編成・実施の方針)を定め、早ければ29年以降の個別入試に反映される見通しだ。

アドミッション(入学者受入)
能力レベルと評価方法示す

 アドミッション・ポリシー、ディプロマ・ポリシー、カリキュラム・ポリシーについては、三つのポリシーの一体的な策定を各大学に義務付ける。「高大接続改革実行プラン」に基づき、平成27年度中にアドミッション・ポリシーに関するガイドラインを策定するなど、個別選抜改革を推進するための関係法令を中教審の議論を経て改正する。
 その際、各大学のアドミッション・ポリシーに具体的に盛り込む内容をどうするかが重要な検討課題の一つ。
 論点(案)として次のような内容例が提示されている。
 一つは「大学として具体的にどのような力を持つ学生を受け入れたいか」。また、学力の要素として重要とされている「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「主体性・多様性・協働性」の三要素について、具体的にどのような能力をどのレベルで求めるのか。
 さらに、学力の三要素を適切に評価するため、どのような方法を選択し、どのようなレベルを要求し、どのような比重を置いて評価するのか。方法に関しては「大学入学希望者学力評価テスト」、「記述式や論述式の問題」、調査書(「高等学校基礎学力テスト」を含む)や活動報告書(ボランティア・部活動など)、各種大会や顕彰などの記録、資格・検定試験、推薦書などの「高校時代の学習・活動歴に関する資料」「エッセイ、大学入学希望理由書、学修計画書」「面接、集団面接、プレゼンテーション」などを例示する。

ディプロマ(学位授与)
卒業するための要件明確化

 ディプロマ・ポリシーはいわゆる出口管理に連なる。学生に身に付けさせるべき学習成果は何か。卒業するための要件を明らかにするとともに、その認定に当たっての厳格さを求めたものだ。

カリキュラム(教育課程編成・実施)
教養・専門教育などどう充実

 カリキュラム・ポリシーは卒業するに際して付ける力を明確にした上で、付ける力を育成するための教育課程の編成・実施方針を明らかにするものだ。教養教育科目が減少し、実務教育科目が増える傾向にある中で、教養教育と専門教育をどう充実していくか、初年次教育やキャリア教育を教育課程にどう位置付け、充実を図るかなどの検討課題がある。
 アドミッション・ポリシーに関するガイドライン策定後、各大学ではアドミッション・ポリシーの明確化を図り、大学入学者選抜実施要項につなげていく。
 同実施要項には、「大学入学希望者学力評価テスト」や「高等学校基礎学力テスト」の活用方法の明示なども予定するが、まずはアドミッション・ポリシーに基づいた個別選抜の具体的な方法や選抜時の評価に関する資料の種類などの受験者への明示をすることになる。
 「高大接続改革実行プラン」では、28年度大学入学者選抜実施要項以降、順次反映する旨記述されている。

高大接続改革の全体イメージ(素案)
高大接続改革の全体イメージ(素案)

高大接続改革に関する体制について
高大接続改革に関する体制について

15年前の中教審答申でも…
「1点差刻みの選抜」から転換

 高大接続改革は15年来の宿題だ。平成11年12月に中教審が答申した「初等中等教育と高等教育との接続の改善について」では、大学側に受験生に求める能力、適性などについての考えをまとめた「入学者受入方針(アドミッション・ポリシー)」の明確化と、選抜方法や出題内容への反映などを求めている。具体的には「リスニングを実施したり、多様な活動に関する自己推薦書を選抜資料として活用」などを提案した。
 当時の答申でも「1点差刻みの選抜」からの転換を促す。「学力検査のみの選抜を行うところがあってもよいし、それ以外の多様な方法による選抜を行うところがあってもよい。その際、教科・科目の基礎的な知識量だけでなく、論理的思考力や表現力等の学習を支える基本的な能力・技能や大学で学ぶ意欲がどのくらいあるかといった視点で判定することや、入学時点での学力だけでなく、意欲や関心の強さを含めて入学後に伸びる可能性も考慮に入れて判定することも必要」などと言及した。
 また、この時には、高大の接続を重視し、教科・科目の知識だけでなく「高校での教科・科目の学習を通じて習得される論理的思考力や表現力、応用力等の大学での学習を支える能力・技能を評価する方法を確立することが必要である。このため、例えば、大学、高校側の協力を得て、大学入試センターにおいて教科・科目横断型の総合的な問題等についての研究を行うなど、評価尺度の多元化に対応した評価方法の研究を進める必要がある」と提言した。

今夏、共に創ろう「先取りセミナー」
「知りたいこと」大募集

 日本教育新聞社は今夏、(株)ナガセと共に「大学入試改革先取り対応セミナー」を開きます。昨年度の「英語教育改革先取り対応セミナー」に次ぐ第2弾です。
 特に、平成32年度実施を目指し、検討が進められている「大学入学希望者学力評価テスト」(仮称)などを主眼に置いたセミナーを開催するに当たって、高校現場を中心に大学入試改革、高大接続改革などで「知りたいこと」や、分科会テーマで取り上げてほしいことなどを大募集します。疑問と感じている点、こうしてほしい点、ご意見など、幅広くお寄せください。
 皆さまの声を反映しながら、セミナーを共に創っていくことを目的にしています。
 ご意見などは、ファクス(03・5510・7812)へ、「大学入試改革先取り対応セミナー」係と宛名を明記いただき、お送りください。

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