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居場所とスクールソーシャルワーク

18面記事

書評

西野 博之・山下 英三郎 著
子と関わる大人の姿勢問う

 著者の西野氏はNPO法人フリースペースたまりば理事長、もう1人の著者はNPO法人日本スクールソーシャルワーク協会名誉会長。子どもの居場所と、スクールソーシャルワークの分野にあって、それぞれ先駆けと呼べる民間サイドの指導者である。
 30年を超え、付かず離れずの関係で時代を駆け抜けてきた2人の対談を収めた。共に目指すところは、子どもにとっての「最善の利益」で、子どもとの関わりが大人の都合になっていないかをさまざまな場面で厳しく問う。
 居場所づくりの長い経験から、西野氏は「子どもは『助けて』を言葉にしづらい生き物」と実感し「だから大人がかかわることを通して、子どものSOSをどうやったらキャッチできるのかが問われている」と指摘する。
 山下氏は、現状のスクールソーシャルワークが「子どもの権利擁護」ではなく「学校の利益擁護」になっていないかと提起する。
 子ども減の中、小・中学校合わせ12万人前後で推移を続ける不登校者数に対して、子どものニーズに合った対策になっているか、子どもが不適応を起こしている学校に問題はないかなどや、大人からの指示待ちで挑戦しない子どもの課題、子ども自身の安定や人間性を求める一方で詰め込みとなっているカリキュラムの矛盾など、広範な話題にも触れる。
 子どもに関わる多くの大人に読んでもらいたい。
(子どもの風出版会 1728円)
(矢)

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