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道徳教育と愛国心

14面記事

書評

「道徳」の教科化にどう向き合うか
大森 直樹 著
変遷たどり国定の問題指摘

 道徳教育を著者(東京学芸大学准教授、教育学・教育史)は、次の四つに分類。(1)子どもの生活の場としての学校で、自然に育まれていく無意図的な道徳教育(2)道徳に関わる、歴史や事実の学習の意味での道徳教育(3)教員の意図的・計画的な取り組みによって、子どもの道徳を育もうとする道徳教育(4)道徳教育の抜本的改善・充実を図ろうと提起(文科省)された「考え、議論する道徳教育」―。
 「道徳」「道徳教育」という言葉が意味する内容を、異なった前提で未整理のまま議論・論議していることはないか。著者は、錯綜する論戦の整理を試みる。本書は8章構成、第1章が「道徳の教科化とは何か」。続く2章で「戦前の道徳教育を見る―修身と愛国心の評価」。「戦前の道徳教育は反省されたのか―戦後教育改革の『抜け道』」が3章。史的経過を知るにはこれが必要でないか。
 そして、「復活した国定の道徳教育―一九五八年『道徳の時間』特設」(4章)。「国定による道徳教育はなぜ問題か―批判と反対の声」(5章)。教育現場と市井の反応を知ろう。「愛国心教育の制度的漸進」(6章)と、続く7章「安倍政権下の二四教育法と道徳教育」が現今の問題。終章は「『道徳』の教科化にどう向き合うか」だ。読者の視界は広がるし、戦後教育の重みを知る大冊である。
(2808円 岩波書店)
(飯田 稔・千葉経済大学短期大学部名誉教授)

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