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偉人たちの生と死のカルテ

12面記事

書評

古井 倫士 著
胃潰瘍の文豪、薄命の女優…

 凡人にもこの本で論じられている偉人にも平等に死がやってくる。本書は医師の立場から、偉人たちの死に至るまでの様子を残された資料を分析しカルテ風につづった本で、読み物として実に面白い。
 古今東西の各分野の偉人が取り上げられ、読者はご自分の興味・関心から選んで読むことができる。評者の場合なら、作家の章での夏目漱石と森鴎外が最も興味深かった。胃潰瘍で亡くなった漱石の姿が紹介される。
 <胃潰瘍とは胃の粘膜が種々の原因によって障害され欠損した状態である。種々の原因のなかには生活上のストレスも数えられていて、教養人であるだけに漱石も多くのそれに曝されていた>
 漱石の病死は、現代人にも警鐘をこうやって鳴らす。それにしても49歳で死去した漱石の死は残念至極である。漱石こそ現代口語文の土台を創られたまさに偉人なのである。
 映画スターのマリリン・モンローのカルテも面白い。モンローに関しては、<三十六年間の短い人生は精神のみでなく肉体的にもあまり恵まれたものではなかった>というカルテの結論になっている。
 終活ブームである。自分の死について考える際に、本書はさまざまな刺激を与えてくれるだろう。
(1296円 黎明書房)
(庭野 三省・新潟県十日町市教育委員会教育委員)

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