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子どもが危ない!スマホ社会の落とし穴

12面記事

書評

清川 輝基・内海 裕美 著
自殺との相関示す報告も

 「学校の今」というテーマで子どもたちの健康について講演した時のことである。お決まりの質問会が始まった。驚くことに大半の方の手が挙がった。さすがに全国の開業医である。「どうしてゲームを学校で禁止しないのか」という詰問であった。経済至上主義の日本においては学校だけではと答えた。
 中高生で病的なネット依存が疑われる生徒は、7人に1人という現実が公表されたが、依然として子どもを食い物にする企業は反省の行動を示しているとは思えない。お隣韓国では国家として制限を強くかけている。
 また本書の中に子どもと若者の自殺傾向とスマホなどの使用時間には強い相関が見られるという研究報告が紹介されている。発達期に無機質なスマホやタブレットに向き合うことで、人格形成や生命感覚に大きなゆがみが生まれ、社会性を身に付けられない奇妙な人間が誕生し始め、自殺や不登校の増加は、こうした事態への警鐘とみるべきと指摘している。
 さすがに小児科医系の著者2人の指摘は、根源を突いている。こうした類いの本は多いが、内容や構成からして別格のものであることが分かる。それは評論家や学者が書いているものではなく、現場からの発信であるため説得力が違い、具体性に富んでいる。落とし穴とは、陥れる明確な意図があって、紛らわしく掘られている。子どもを犠牲にする国に明日はない。
(1728円 少年写真新聞社)
(大久保 俊輝・亜細亜大学特任教授)

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