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大正の教育的想像力 「教育実際家」たちの「大正新教育」

14面記事

書評

立川 正世 著
「教育改造」構想など言説に焦点

 「『教育実際家』たちの『大正新教育』」と副題の付く本書。教師たちが“生き生き”としていた時代を、教育実践史の立場で論究する一冊だ。教育学研究者として育ちつつ、小・中学校教師を12年経験、その後に大学院博士課程で学んだ碩学の労作だ。中野光氏の「大正自由教育の研究」(1968年)などの先行研究に学びつつ、教育実際家の言説・活動に焦点を当てる。中野光氏の好著は、評者もかつて読み学んだ本。懐旧の思いで、本書を読み通した。本書の内容に目を向けよう。
 本書は10章構成、「『教育実際家』たちの『大正新教育』」(第一章)に続いて、第二章が「『教師』の『人生論』と『教育論』の<あいだ>」である。
 第三章から第五章は“新学校”を代表する教育実際家3人。羽仁もと子の「家庭―学校―社会」、澤柳政太郎の「教育改造」構想、野村芳兵衛の「生活教育論」(児童の村小学校)に注目しよう。
 第六章から第九章は、師範学校附属小学校の教育実際家4人。千葉命吉(一切衝動皆満足論)、及川平治(動的教育論)、木下竹次(学習法)、手塚岸衛(自由教育論)の登場。終章は「『大正新教育』の『教育論』パラダイム」となる。それに“補論”「戦後教育再考―『教育問題』パラダイムを超えて」が加わる。教育実践史研究から、現今の教育に話は及ぶ。
(2808円 黎明書房)
(飯田 稔・千葉経済大学短期大学部名誉教授)

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