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未来のひとづくりを考える

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菅公学生服がシンポジウム

 菅公学生服(本社=岡山市)は学生服・体操服を基幹事業としながらも、近年では、“ひとづくり”をモットーにさまざまな事業を展開している。2016年には「カンコー教育ソリューション研究協議会」を立ち上げ、特に児童・生徒のキャリア教育活動に力を入れており、学校向けの独自プログラムの策定などにも取り組んでいる。2月9日には同協議会主催の「未来のひとづくりシンポジウム」が東京で開かれた。同協議会が注目する「非認知能力」に焦点を当てたもので、4人のパネリストがそれぞれの立場からその重要性を述べた。

非認知能力の重要性を議論

 知識や技能といった「認知能力」だけでなく、表現力や決断力、物事をやり抜く持続力などの「非認知能力」を伸ばすことが子どもたちの未来を切り拓くと考える同協議会。シンポジウムではパネリストが経済、教育、経営などの各分野から非認知能力の重要性について提言した。ファシリテーターは一般社団法人キャリア教育コーディネーターネットワーク協議会代表理事の生重幸恵氏。
 経済分野からは大阪大学大学院経済学研究科教授の大竹文雄氏が発言。人工知能が人間の仕事を代替する中で、残る対人コミュニケーションの仕事には非認知能力が求められるため、その力を伸ばすことは重要だと指摘。また、非認知能力が高いと所得が低い場合でも幸福感が高くなることも明らかになっており、「経済の豊かさだけではない観点から認知能力・非認知能力両方の育成を考えていくことが必要」と述べた。
 岡山大学全学教育・学生支援機構准教授の中山芳一氏は、人の育ちを「家」に例えて非認知能力を解説。「知識・技能などの認知能力は天井や窓に当たり、自己肯定感が家の基礎部分となる。非認知能力は柱や筋交いに当たる」とし、知識・技能を支えるものとして非認知能力の育成の重要性を指摘した。中でも自分と向き合う力である自制心、自分を高める向上心、他者とつながる共感性などを育てる必要があるとし、大人がこの三つの力をプロセスを通して価値付けることが「体験を経験へと昇華させる」とした。
 キャリア教育支援事業を展開する特定非営利活動法人アスクネット代表理事の白上昌子氏は、高校生のインターンシップ体験などを企業とコラボして展開した事例から、チームワークや自尊心を高めることが大学進学の意欲につながった例を紹介。さまざまな気付きの場を与え、中高生においても非認知能力を伸ばすことの必要性を述べた。
 同協議会代表理事で、菅公学生服の尾崎茂代表取締役社長は、「大人が変わらないと子どもは変わらない。非認知能力を備えた人材育成が課題だと感じた」と、協議会の趣旨を確認。企業においてはビジョンや理念を大切にできる人材、主体的に考える人材が求められるとした。また、多様な生き方、働き方が想定される今後「多様な人と接する機会を子どもたちに用意するには、企業が積極的に対応すべき」だと組織の枠を超えた連携を呼び掛けた。
 各パネリストからの提言後、会場との質疑応答が行われ、ファシリテーターの生重氏は「Society5・0に向けて、またSDGsの達成が課題となる中、非認知能力を子どもたちにどう育成していくかは、我々全員の課題。新しい学び方が求められている。みんなが知恵を出し合いながら未来の担い手たちに、何かをバトンを渡していく場を考え続けなければならない」と結んだ。
 会場では児童期から非認知能力を育むことを目的とした「カンコーNCSプログラム」、中高生を対象にしたアクティブラーニング型のキャリア教育プログラム「Ancs(アンクス)プログラム」、部活動をキャリア教育とリンクさせた「部活のチカラ ヒトづくりサプリ」など、同協議会が提案する各種教育プログラムのパネル展示があった。参加者は非認知能力に着目した取り組みの実践例に見入っていた。

 菅公学生服=https://kanko-gakuseifuku.co.jp/
 問い合わせ=一般社団法人カンコー教育ソリューション研究協議会 https://www.k-esc.or.jp/contact/

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