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教師のわざを科学する

14面記事

書評

姫野 完治・生田 孝至 編著
共有化への仕掛けも提言

 「教師のわざ」というと、名人芸のように教師固有のものと捉えるか、ハウツーのように誰でも使えるものと捉えるか、そのどちらかが一般的のように思われるが、本書は、教師のわざを対象化し、それを科学として解明しようとした点に特徴がある。
 『未来を拓く教師のわざ』に続く書で、「教育技術」という用語を使わず、「教師のわざ」としたのは、日本の伝統芸能の世界での内包的意味を大切にしたいとの思いからだ。
 内容は、第1章と第2章で「教師のわざ」の概念や授業研究の関連を整理した上で、第3章から第7章で、「ことばと語り」「ふるまい」「みえ」「授業づくり」「わざの伝承」という5側面からアプローチ。第8章では、教師や熟達者のわざ研究の先駆者である生田孝至、生田久美子、西之園晴夫の3氏が「教師のわざを科学すること」を論じている。
 方法論は、授業中の教師と子どもの発話だけでなく、ウェアラブルカメラや360度カメラを使うなど、最新の教育機器を駆使。また、わざを伝える際も、単に授業や研修を設けるだけでなく、わざを共有するための仕掛けを考えているのも画期的だ。
 教師の資質・能力の向上が叫ばれる中、教育学をリードしてきた大先輩から、新進気鋭の若手まで、しかも多様な立ち位置の17人の研究者が、教師のわざを科学することに挑戦した類のない一冊として薦めたい。
(2160円 一莖書房)
(規)

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