日本最大の教育専門全国紙・日本教育新聞がお届けする教育ニュースサイトです。

<前向きな諦め>を促すインターネット認知行動療法

14面記事

書評

下山 晴彦 監修
菅沼 慎一郎 著
心の健康保つアプリを研究

 「前向きな諦め」ってあるのか?諦めるか、諦めないか、という単純な捉え方が間違っていると指摘された。もちろん「諦め」の語源が「明らかにすること」とは知らなった。
 仏教の観点から諦めの意味を解説はしているが、あくまで心理学専門書として構成されている。諦めを認知行動療法の観点から探究させるため研究手法を用いて意味的構造を科学的に見いだすという独創的な研究書といえる。博士論文がベースになっているため難解な箇所もあるが、「日本文化にそくした心理支援のために」という副題が、読み進めると、日本人だから理解できる気がする。今後期待される分野の内容と見た。
 本書で紹介される研究の中で開発され、公開されているアプリ「あきらめたまご」とは? 早速開いてみた。過去の失敗にとらわれてしまっている状態から、未来の多様な可能性へと視野を広げられることを目指したゲームである。人生において「幸せ」につながる道は一つではなく、多様な展開があり得ることを体験させるカワイイ優れものである。
 読み始めは、後段の166ページから始めるとよい。ワークシートのようになっている。II部6章構成でコーヒーブレークのコラムは、一息ついて読めるのがありがたい。私は、「前向きな諦め」を始めた矢先に、なぜかしら己心に新たな世界が広がり、新たな冒険が始まった。ふと、言い知れぬ「幸せ」を感じた。
(3024円 ミネルヴァ書房)
(大久保 俊輝・亜細亜大学特任教授)

書評

連載