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21世紀のカリキュラムと教師教育の研究

14面記事

書評

古川 治 著
多様な教職経験基に教育課題と展望示す

 小・中学校、教育行政、大学のそれぞれの現場に3分の1ずつ身を置いた著者の教職人生の中で培った経験、知見がカリキュラムと教師教育の課題の提示、今後の考察につながった一冊。全12章で構成し、第1章~第5章では新学習指導要領などを中心に言及し、第6章以下は教員の養成などを取り上げた。
 一つ一つのテーマについて、その変遷なども平易に言及されており、教育史として整理しながら読むこともできる。
 また、右前輪に「習得」、左前輪に「活用」、両輪をつなぐのが「『習得』『活用』『探究』という往復運動する学習活動」。後輪には右に「PISA型学力(キー・コンピテンシー)」、左に「シティズンシップ教育(グローバル市民)」とし、前・後輪をつなぐシャフトが「目標と指導の一体による学習指導」と、「確かな学力」を四輪駆動車に例えるなど、独自の見解も随所にある。
 特に、この間、大きく変貌してきた大学、教育委員会との連携、協働による教員養成の在り方についての論考は教育実習、教職の高度化や専門職化、教員育成指標、教師のライフヒストリーまでときめ細かい。
 養成から採用後の早期退職防止などに尽力してきた著者が、50代で迎えた教員のアイデンティティー危機に警鐘を鳴らしている点などは、若手教員育成に偏重しがちな教員研修の在り方に異なった視点を与えてくれる。
(3024円 ERP)
(矢)

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