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学習指導要領の読み方・活かし方

18面記事

書評

学習指導要領を「使いこなす」ための8章
合田 哲雄 著
未来見据え、行政官が教育語る異例の書

 タイトルとは別に「2020年学習指導要領解説の決定版」と銘打つ。それはそうだろう。「黒衣」とはいえ、2008(平成20)年、2017(同29)年の学習指導要領改訂に関わった行政担当者の手による「解説」である。
 学校教育の未来像を語る上での課題から、学習指導要領の役割と変遷、2017(同29)年改訂のプロセスと基本的な考え方、「主体的・対話的で深い学び」と「見方・考え方」、学習指導要領を「使いこなす」ことなどを全8章にわたり、平易に、しかも熱く解説する。現場が直面した「深い学び」「見方・考え方」への疑問にも答えている。
 自分自身で考えて自立する子どもを、どう育てるかという教育本来の営みを、技術革新など時代が変化する中で、どう実現するか。近未来がもたらす創造性を発揮する者の育成、その革新を享受できない者たちへの社会的公正の担保という矛盾も視野に入れ、行政官が未来も見据えて教育を語る異例の書だ。
 変化への対応として取り入れる「プログラミング教育」などの新しい学習という「アクセル」、働く時間を順守する「ブレーキ」の、それぞれの意義は理解できた。だが、共存は可能か。朝45分早い出勤を見直せば、時間外勤務の縮減につながる、では、数字の帳尻は合っても、現場の納得解は得られないのではないか。今度は働き方改革の担当者という軸足から、もう一冊著してほしい。
(1728円 教育開発研究所)
(矢)

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