日本最大の教育専門全国紙・日本教育新聞がお届けする教育ニュースサイトです。

「エビデンスに基づく教育」の閾を探る

12面記事

書評

教育学における規範と事実をめぐって
杉田 浩崇・熊井 将太 編
政策・実践・研究の面から検討

 “教育学における規範と事実をめぐって”という副題の付く本書は330ページを超す大冊。まず、書名に用いられている「閾」とはどのような意味であるか。「しきい(敷居)、しきみ、区切り、仕切り、範囲」が辞書的に理解できる。当今、エビデンス(客観的根拠)に基づく教育改革や教育政策づくりが求められている。エビデンスを口にする実践家も増している。エビデンスによる教育を主張する側と、それを批判する側の対話は進んでいない。
 実践的・経験的に語られてきた“教育”に、客観的・科学的根拠とされる「エビデンス」がどう関わり、閾を問うことになるか。本書は、二人の編著者、杉田氏(広島大学准教授・教育哲学)、熊井氏(山口大学講師・教育方法学)を中心に、若手新進の教育学研究者が執筆。
 「『エビデンスに基づく教育』という問題圏」(第1章)に始まり、「教育政策・制度と『エビデンス』とのあいだ」の第1部。ここでは、「教育政策においてエビデンスを『つかう』とはどういうことか」などの、三つの章が用意されている。
 そして第2部が、「教育実践と『エビデンス』とのあいだ」で「EBE(エビデンスに基づく教育)を実践で語ろう」などの3章構成。続く第3部が「教育研究と『エビデンス』とのあいだ」の三つの章。最後は将来の展望だ。
(4070円 春風社)
(飯田 稔・千葉経済大学短期大学部名誉教授)

書評

連載