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<しんどい学校>の教員文化

16面記事

書評

社会的マイノリティの子どもと向き合う教員の仕事・アイデンティティ・キャリア
中村 瑛仁 著
インタビュー調査通じ浮かぶ実情

 <しんどい学校>とは、著者によれば次のような定義になる。
 <校区の社会経済的背景が低位に位置づき、指導上の問題が生じやすい学校>

 社会経済的背景はともかく、指導上の困難が生じやすい学校は、全国にごまんとあるだろう。そういう意味で本書がまとめられたことは、意義深い。この<しんどい学校>に勤務されている教員の意識を、アンケートではなくインタビュー調査からクローズアップしているのが、本書である。
 <しんどい学校>に勤務されている教員のインタビューの数々が報告されているだけでも、本書は意義がある。また<しんどい学校>でも教職の面白さを体感している教師がいることをも知り、評者は励まされ、希望を見た。
 少なくとも公立学校なら、教育行政で人事異動を所管している関係者からこの本を読んでいただき、人事面から<しんどい学校>に支援していただけたらと心底思ってしまう。
 「格差社会」の今の日本をもっとよくしていくためには、<しんどい学校>の教師への支援が欠かせない。それにしても、マスコミの教育関係の報道は偏っている。<しんどい学校>に勤務しながらも子どもたちのために日夜、業務に励んでいる姿がほとんど知られていないからである。
(4840円 大阪大学出版会)
(庭野 三省・新潟県十日町市教育委員会教育委員)

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