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お前の親になったる 被害者と加害者のドキュメント

17面記事

書評

草刈 健太郎 著
元受刑者雇い更生を支える被害者家族

 書名(副題にも「被害者と加害者のドキュメント」とある)からも何だか覚悟を強いられるような内容が想像できるが、実際に読み進めると、実に壮絶なルポであった。
 著者は市井の中小企業経営者であり、書くことについては専門ではない。それなのに、何だろう、読んでいくと緊張感があふれ、真剣に向き合わなければならない自分に気付く。
 著者は、最愛の妹が夫から殺されるという耐え難い経験をした被害者家族である。それが何の因果か「職親プロジェクト」と呼ばれる犯罪者の更生事業に関わることになってしまうのだ。その経緯にも著者の、常人には想像し難いさまざまな体験があるのだが、何といっても、実際に預かった4人の事例がドキュメントゆえ生々しい。
 一例を挙げよう。うそをつくことに何の後ろめたさもないYとのやりとりの中で、著者は、彼をそのようにした家庭環境があり、社会的被害者と受け止めていく。面倒を見ても何度も裏切られる日々に、腹を据えて根気よく対応する。他の3例も同様だ。
 最近、耳目をふさぎたくなるような事件や家庭崩壊を思わせる事件などがよく報道される。そんな時世だからこそ、著者の取り組み姿勢や本書のそちこちに語られているさりげない言葉は貴重な示唆を与えてくれる。緊張はするが、一服の清涼剤でもある。
(1540円 小学館集英社プロダクション)
(八木 雅之・元公立小学校校長)

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