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まちかど保健室にようこそ <川中島の保健室>ものがたり

18面記事

書評

白澤 章子 著
地域の人々に寄り添う元養護教諭

 誰でも気軽に訪ねて、ほっとできる保健室だ。
 著者は、長野県公立小・中学校の養護教諭を40年勤め、退職後自宅に<川中島の保健室>をボランティアで開室して10年になる。子育てやこころ・からだ・性にまつわる相談と講演や出前授業に取り組んでいる。
 遊びの途中で訪れる子ども、いじめや不登校、リストカット、からだや性の問題、家族の問題等さまざまな悩みを持つ子ども、保護者、若者、中高年など、利用者は1年間に600余人、年代は3歳から81歳と幅広い。現職中から集めた4千冊もの本を無料で貸し出している。
 一つ一つの相談に対する著者の対応は実に温かで、高い専門性と相手を支える気持ちにあふれている。例えば、本書後半にある「不登校から8年、しげるさんの歩み」には、不登校対応の本質が記されていると思う。
 著者が大切にしている性教育の取り組みには、サークルの仲間と共に、国際的視野に立ち、子どもたちの成長を願って探究し続ける強い意志と信念を感じた。
 著者は、現在、まちかど保健室を全国に広げたいと活動中。人々の悩みには現代社会の課題が表れている。子どもは、励ましを受け自分らしいペースで成長する。地域の中に、敷居の低い居場所・相談できる場所があることの大事さが伝わってくる書である。
(1540円 かもがわ出版)
(谷 智子・高知市教育委員会委員)

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