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避難所を開設するときに必要なスペースと生活環境~いざというときに備えて~

13面記事

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円滑な避難所運営のカギは、平時の準備・訓練

開設直後に空間配置を決めておく
 学校施設で避難所を開設する場合、設置者及び学校は教育活動の再開を見据えて地域住民に開放する部分とそれ以外の部分を明確に区分した上で、避難者の居住スペースや避難所運営スペースを設定する必要がある。とりわけ重要なのは、これらの空間配置が後づけにならないよう開設直後から決めていくことで、避難所運営のためのマニュアル等を事前に準備しておき、訓練等でその実効性を検証しておくことが大切だ。
 避難者に必要なスペースとしては、居住以外に、障害者・高齢者・妊産婦等、感染症患者、男女別トイレ(仮設トイレ、マンホールトイレを含む)、男女別の更衣室、授乳、洗濯、男女別物干場、掲示、公衆電話設置、救援物資配布、仮設風呂・シャワー設置などのスペースが求められる。また、運用関係では、運営本部、ボランティア、救護、救援物資の保管、炊き出し、ごみ置場などのスペースが必要になる。
 避難者の居住スペースは屋内運動場や武道場が中心になるが、必要に応じて普通教室、特別教室等の利用が想定される。居住スペースの設定に当たっては、避難者1人当たりの必要な広さ(3平方m程度)と室内の通路を確保できるよう計画しておくこと。
 感染症患者の専用スペースは、一般の避難者の避難スペースとは離れた場所に計画するとともに、感染症患者専用のトイレも計画することが有効だ。また、障害者・高齢者・妊産婦等の専用スペースは、多機能トイレからの距離が近く、寒さ・暑さの対策が取りやすいスペースに配置すること。加えて、滞在期間が長くなる場合は、間仕切り、カーテン、テントなどでプライバシーを確保することも必要になる。
 さらに運営関係のスペースは、円滑な連絡調整を実現するため、可能な限りまとまったエリアに設定し、避難者の居住スペースと明確に区分することが望ましい。また、万が一に備えて緊急車両の駐車スペースを確保しておくことも大事になる。

遅れている空調設備の整備とバリアフリー化
 学校の体育館を避難者の居住スペースにする場合の大きな課題が、冷暖房などの空調設備が未整備であることだ。避難者は慣れない場所での共同生活にストレスを感じるとともに、季節によっては暑さ・寒さと向き合うことで健康を損ねるケースが多いことが、これまでの災害からも分かっている。つまり、たとえ停電が起きていなくても、避難者には生活しづらい環境が待ち構えていることになる。
 将来的には停電時の電源確保も含めた空調設備の整備が必須になるが、財政的な負担を考えれば一足飛びにはいかない。したがって、限られた予算から熱中症や冬場の暖房対策として大型送風機・暖房機、スポットクーラーなどを計画的に導入していく工夫も求められる。
 また、建物のバリアフリー化も遅れている。車いす利用者や高齢者、ベビーカー利用者にとっては段差が1つあるだけで誰かの手助けが必要になるが、2019年4月時点の文部科学省の調査によれば、屋内運動場でスロープ等の設置による段差解消をしている小中学校は約6割に留まっている。
 こうしたエレベータ、自動ドア、スロープ等を設置するバリアフリー工事は国庫補助対象になっており、総務省でも指定避難所の生活環境の改善に予算を充てていることからも、同じく整備が遅れている「多目的トイレ」の設置と併せて改修を進めてほしい。

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