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道徳教育はこうすれば<もっと>おもしろい

12面記事

書評

未来を拓く教育学と心理学のコラボレーション
荒木 寿友 藤澤 文 編著
「哲学対話」など多彩な試み紹介

 道徳のつまらなさ、表札を変えてもさほど変わらず、評価という仕事が増えただけのように感じている教師が多いのではないだろうか。本書は、それをこうすれば<もっと>おもしろいと、既成概念を砕こうとしている。副題の未来を拓く教育学と心理学のコラボレーションという視点に注目した。章ごとに書き手が違い、それぞれの個性が見て取れる。
 中でも第6章の「多文化共生=グローバル時代の道徳教育」から読まれると視野が広がり理解がしやすい。「国際理解から共生へ=『異己』理解・共生プロジェクトから」で行われた場面理解の差異を隣国の韓国、中国と日本の児童・生徒の認識の違いをあらわにした記述は実に興味深い。「哲学対話」と名付けた「教室の中の異和を思考と対話の空間づくりに変えていこうとする試み」もある。その取り組みにより子どもたちの創造性、自立、協働性が育つと指摘。シティズンシップ教育とは、市民の育成にある。その市民性は、探究、批判的思考、討議・熟議をデザインする民主主義の教室の中でこそ育つものである。多文化共生・シティズンシップから見る道徳こそ、このような対話空間を必要とし、また生み出していくものである―と指摘しているが、その通りである。
 青年教師は、子どもと共に考え、何のための道徳なのか自らに問いながら、第3部の指導案を活用して、挑んでみてはどうだろうか。
(2860円 北大路書房)
(大久保 俊輝・亜細亜大学特任教授)

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