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「9月入学は慎重に」、日本PTAが緊急要望書

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 (公社)日本PTA全国協議会(佐藤秀行会長)は1日、政府内で議論が始まった「9月入学」について、「時間をかけて慎重に検討していただきたい」とする要望書をまとめ、文科省に提出した。導入した場合、学校の年間計画の変更などが求められることから、教員への負担が重くなると指摘。児童・生徒の人間関係の上では、現在の学年が分断される可能性を挙げ、「子どもたちにとって受け入れられないこと」と訴えている。
 入学・新学期開始を4月としている現行制度を改めて9月とする仕組みについて、萩生田光一文科相は、「一つの大きな選択肢」(1日の定例記者会見)との認識を示している。
 同日の会見では、改める場合、今年からなのか来年からなのかという質問に対し、明快な回答はなく、「子どもたちのために最高の判断、最高の選択肢は何なのかというのを考えていく中で、一つの選択肢に、9月に移行というのを考えている」などと述べた。
 同協議会の要望書では、「突然の9月入学に関する議論の高まりは、子どもたちにさらなる不安を与え、保護者にとっても多くの戸惑いを生む」と指摘。今は、子どもたちの学びの保障、心と体のケア、学校再開、入試の弾力的な扱いなどに予算・時間・労力を費やすことが必要だとしている。
 このような主張の根拠としては9点を挙げている。
 教職員の負担が増えることをはじめ、家庭にとっては、学年の始まりが5カ月遅れとなることで経済的な負担が増す恐れがあるとしている。具体的には、卒業までの月日が増えることとなり、授業料負担が重くなると訴えた。
 学年が分断される問題については、現行制度では4月2日以降、翌年の4月1日までに生まれた児童・生徒で1学年を編成していることから、9月入学・新学期となった場合、現在の学年が分断されるのではないかと疑問を投げかけた。「これまで級友として学び合い、支えあってきた学年を分断するような政策」と評している。
 同様に、子どもの心理に触れた指摘では、保護者の勤務先の転勤は4月が多いことから、9月入学・新学期となった場合、卒業を間近に控えた時期に転勤を言い渡される家庭も多く出る可能性があるとし、「子どもへの心理的負担は大きい」と指摘した。
 このほか、部活動について、現状では5月から8月にかけて大会が集中していることから、夏に入試を行うこととなると、最終学年が大会に参加することは難しい点を挙げた。
 就学前の子どもたちに関しては、保育所の収容力が不足する可能性を指摘している。
 学業を終えて就職する際の課題としては、4~8月に企業や官公庁は労働力を十分に確保できなくなる恐れがあるとしている。現状では4月から新人を採用することが多いため。9月入学・新学期では、3月に卒業生を送り出せなくなる。
 海外との比較では、9月入学・新学期とすると、現状よりも5カ月間、学習を始める時期が遅くなるとして、国際競争力を下げる可能性を指摘した。
 季節感と卒業・入学の時期が合わなくなったり、卒業式・入学式の際、熱中症の危険が高まったりすることも挙げている。

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