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夏の激しい運動時の水分補給に適しているのは

14面記事

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岡崎 和伸 教授・医学博士(大阪市立大学都市健康・スポーツ研究センター)

 夏のスポーツ時に「水分をとらなければいけない」というのは、教育やスポーツの現場において浸透しているが、「何を摂るか」ということは、まだ理解が浸透していない。そこで、スポーツ時の脱水を防ぎ、身体の回復をはかるために選ぶべき水分について、大阪市立大学の岡崎和伸教授に聞いた。

多量に汗をかく場合は、経口補水液を

 まず、軽く運動して、少し汗をかく場合は、きちんと食事を摂っている人なら、水やスポーツドリンクで十分です。とくにスポーツドリンクは、水分補給と共に、エネルギーとなる糖質補給にも期待できます。
 しかし、多量に汗をかく場合は経口補水液がいいでしょう。例えば、スポーツや野外活動で1時間以上汗を流したり、ダラダラ汗が止まらなくなったりした人に勧めます。
 また、スポーツ中の水分補給により喉の渇きは癒されますが、塩分濃度が低い飲料を飲んだ場合、血液の塩分濃度が薄まることがあります。その場合、私たちの体は、薄まった血液の塩分濃度を元に戻すために塩分濃度の薄い尿をたくさん出して血液を濃縮しようとします(自発性脱水)。これでは脱水は改善されませんから、塩分を含んだスポーツドリンクや、多量発汗の場合には塩分濃度がスポーツドリンクよりも高い経口補水液を摂るべきです。
 激しいスポーツの後の脱水状態からの回復を速くするには、スポーツで流した汗の同程度か1・2~1・5倍の水分と塩分量を、できるだけ食事と共に摂ること。脱水前の体液状態に効率よく回復するには、経口補水液などを活用し、汗で出た分を補うという発想を持つことです。

暑さに慣れていないときにも効果的
 一般的に、まだ身体が暑さに馴れていない時期は、塩分濃度が濃い汗をかきます。スポーツなどで積極的に汗を流す人は、暑熱馴化をすることで汗による体温調節機能を向上させるとともに、汗の塩分濃度が下がり、水分と塩分などが失われておこる脱水症や熱中症のリスクを下げることができます。暑熱馴化とは身体を暑さに順応させていくこと。身体にそなわっている発汗機能を向上させ、塩分の喪失を抑制し、サラサラの汗にしていくのです。これによって、汗をかいても水分補給で体液バランスを元の状態に回復しやすくなります。逆に、暑熱馴化していない人は、同じ暑さの中で運動した際に失われる塩分が多く、脱水症や熱中症にも繋がりやすいのです。
 暑熱馴化が済んだ人なら、一般的なジョギング程度の運動なら、食事とスポーツドリンクでも十分に脱水から回復できます。暑熱馴化していない人なら、脱水からの回復の為に補給する水分は塩分濃度の高い経口補水液がいいでしょう。

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