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一人ひとりが聞く子どもに育つ教室の作り方

19面記事

書評

多賀 一郎 著
子どものタイプに応じた指導を例示

 新教育課程の基本理念になっている「主体的・対話的で深い学び」の土台を支える子どもの姿を、教師はどう捉えているのだろうか。現場の学校に呼ばれて、指導に当たっている著者は、授業で対話が続かない現状を次のように分析されていた。
 <聞かない(聞けない)から話がつながらない>
 つまり「聞く力」を育てないと「深い学び」は砂上の楼閣になる危険性を帯びているのだ。既に「全員を聞く子どもにする教室の作り方」を上梓されている著者は、本書でさらに「聞き方」の向上策を具体的に挙げている。例えば第3章の「聞けない子どものタイプを知る」の分析を読むといい。何と九つのタイプに整理されて、その対策を述べる。
 「ちゃんと話を聞きなさい」のような常套句で、今の子どもを動かすことはできないことを、教師は自覚したい。
 残念ながら聞くことは地味な学習場面なので、教師自身の取り組みの意識が浅くなる。ただ著者のように、質問力も聞く力の一つと位置付けられれば、日々の授業実践で重視することができるようになるに違いない。
 聞く子どもを育てない授業や学級は、最終的に崩壊していく。聞く子どもを育てないと、教育成果が上がらないことを肝に銘じたい。
(2090円 黎明書房)
(庭野 三省・新潟県十日町市教育委員会教育委員)

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