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障害のある青年たちとつくる「学びの場」ステキな人生を歩んでいくために

14面記事

書評

伊藤 修毅 監修
NPO法人大阪障害者センター総合実践研究所青年期支援プロジェクトチーム 編著
成長促す「福祉型専攻科」の試み

 近年、特別支援学校の在籍児童・生徒が増加している。障害の態様の多様化とともに、多様な個性を受け入れているということでもあろう。一方で、高等部卒後の進路では就労重視。いわば就職に偏った進路という現実の中で、卒後に別の「学びの場」があってもいいと、問い掛ける一冊だ。
 卒後の「学びの場」として紹介するのが「福祉型専攻科」。障害者を支援する法律に位置付く自立訓練事業や生活介護事業などに依拠して、2年間の育ちの場を用意する。先駆けは和歌山県。その後、各地へと広がっていく。
 特に、大阪ではこうした試みが広がっていることから、8年目を迎えた「ぽぽろスクエア」や、重度の障害者が多く在籍し「生活面の学び中心2年」と「働く大人への準備2年」の4年間を提供する「シュレオーテ」、「仮説実験」の授業や「私の地元紹介」などのカリキュラムがある「リーブキャンパスひびき」の活動の様子を紹介し、自己理解を深め、集団で過ごすことで自らの意思を表明し、自己選択力が増し、折り合いを付けるなど学生の成長も描き出した。
 「福祉型専攻科」の意義、青年期の成長の在り方、性教育の重要性なども提示する。
 障害の有無にかかわらず、成長の深度は人それぞれである。児童・生徒の増加に対応する量的拡大が進む中、青年期の入り口にある高等部卒業生たちに、多様な選択肢を提供する時期を迎えているのではないだろうか。
(1760円 かもがわ出版)
(矢)

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