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学習者中心の教育を実現するインストラクショナルデザイン理論とモデル

16面記事

書評

C・М・ライゲルース、B・J・ビーティ、R・D・マイヤーズ 編
鈴木 克明 監訳
「情報時代の教育パラダイム」を詳述

 「インストラクショナルデザイン理論とモデル」シリーズのIV巻目。完結予定だった第III巻発刊後、脳科学、情報技術などの進展により、新たな知見が加わり生まれた。シリーズ邦訳は第III巻に続き2冊目。
 多様な初等中等教育、高等教育の環境を視野に「学習者中心の教育パラダイム」について、その基本原理、実現するための詳細なデザイン、どのような指導や学習が行われるかのステップ―の3部構成に全15章を収めた。
 特に、工業時代の時間基盤型教育システムから、情報時代の学習者中心の教育パラダイムへの転換を求め、自己主導的で協働的な学習者であることや、コンピテンシー基盤型教育の必要性を指摘した。本書ではコンピテンシーを「特定のタスクを実行するために必要なスキルと能力、および知識の組み合わせ」とする。
 こうした教育パラダイムの転換は、日本の教育の方向と軌を一にするが、本書では、今日の教育の本来の目的を「世界をより良い場にしていけるような善良で、能力があり、柔軟な人に『なること(becoming)』である」と述べる。これまで目的達成のため学習して当たり前だった国語・算数・理科・社会などの習得から「効果的に考え、効果的に行動し、他人と効果的に関わり合い、有用なことを効果的に達成できるようになる」スキルを学び、身に付けることに変えるよう提案し、刺激的だ。
(4950円 北大路書房)
(矢)

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