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対話力

14面記事

書評

白水 始 著
考え深め、学びもたらす働きを詳述

 本書に興味を持ったのは、白水始氏が書いた本だからである。なぜなら総合教育センターで組織マネジメントの講師でお呼びした時の印象があったからだ。研修担当として期待にかなう講師を選ぶのは簡単なことではない。もちろん、期待を超える講師ならよいが、有名無実の方も少なくないからだ。白水氏は実践に基づいて、受講者のニーズを的確に押さえた素晴らしい講話をされた。その「対話力」が際立って印象に残っていたからである。
 内容は「個人が対話する力を身に付ける」方法について書かれたものではなく、「対話」自体に人の考えを変える力があること、つまり、「対話がもつ力」について書かれている。どんな人にも「対話力」がある。学校での子どもたちの学びを例に示すことが、本書のもう一つの特徴である。第1章の「国境を超えて」から始まり、第7章の「対話から創造へ」と構成されている。どの章から読んでも引き込まれる秀書であることは確かである。
 最近は、人の話を聞けない子どもたち、そして大人が急増している。それは教師も例外ではない。それが人と人の分断を加速してはいないだろうか。著者は語り掛ける。「人間は対話で生き延びてきた存在なのかもしれません。だから、話そう。その倍くらい、聞こう。それをモットーに、今後も質の高い対話の輪を広げていきたい」と結んでいる。
(2200円 東洋館出版社)
(大久保 俊輝・亜細亜大学特任教授)

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