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「大学教育と社会」ノート 高等教育論への誘い

20面記事

書評

山内 乾史 著
学生の進路選択の推移など論考

 本書は、教育社会学・高等教育論を専門とする著者の30年にも及ぶ研究活動の成果をまとめたものである。全体は、大きく4部構成になっている。それぞれの内容は、学部生や大学院生という若い時代に書いた論文から発した問題意識に基づくものである。著者の研究の師をはじめ、指導や感化を受けた研究者との関わりのエピソードも随所に紹介されている。研究活動が他の研究者との関係性の中で、どう展開していったのかを知ることもできる。その意味において、本書は一人の研究者の個人史ともいえる内容になっている。
 第I部では、神戸大学への合格者を対象に、兵庫県内の高校生における進学移動パターンが示されている。第II部では、アクティブラーニングや学習支援における大学のチーム力向上の重要性が指摘されている。第III部では、大学生の多様化と進路職業選択との関連の年次推移が示されている。第IV部では、教育社会学におけるエリート研究の課題と展望がまとめられている。いずれも高等教育に関わるものであるが、その対象は、「一般学生」から「エリート」まで、実に多岐にわたる。
 題名に「ノート」とあるように、本書は、著者の研究ノートであり、研究のエッセンスである。本の装丁が、市販されているノートに書かれたようなデザインになっているのも面白い趣向だ。
(2860円 学文社)
(都筑 学・中央大学教授)

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