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教師の底力 社会派教師が未来を拓く

12面記事

書評

志水 宏吉 著
コロナ禍で広がる格差の解消へ

 教育社会学を専門とする著者は、コロナ禍にあって拡大するさまざまな教育格差の課題解決を模索してきた。そして、その切り札はやはり教師の底力であり、本書の副題である「社会派教師」に託そうとした。
 この言葉は著者の造語だそうだが、「差別や不平等や格差といった社会問題に関心を持ち、教育の力によってそれらを克服し、よりよい社会を築いていこうとする意志を持つ教師」と定義付けている。読み進めると、何ともしっくりする表現だと気付くだろう。そして、その理由が執筆動機と深く関わるのだ。
 著者は自らの体験と研究実践を通じ、大きく二つ執筆動機を述べている。一つ目が恩師の存在だ。教師を目指す理由に「こんな先生になりたい!」という、素朴ではあるが憧れは重要だ。
 二つ目として職場の教育力(教職員集団)の大切さを挙げておられる。特に初任校でどんな上司、先輩、同僚に会うかは思いの外、大きな意味を持つ。
 実は、本書を強く薦めたい理由が著者の執筆動機なのだ。評者の来し方を振り返ると、全面的に共感できるのである。
 本書は、若手教師、もしくは教師を目指そうとする若者たちへの檄文でもあるが、前段で述べたように、多くの教師に読んでほしい。そして、未来を託す子どもたちに、持っている底力を見せてほしいものだ。
(1980円 学事出版)
(八木 雅之・元公立小学校校長)

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