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教育は変えられる

18面記事

書評

山口 裕也 著
「一斉・一律」から「多様性と一貫性」へ

 長引くコロナ禍、社会全体が大きく変わりつつある。学校も教育改革に働き方改革が重なり、さらに感染対策の波が押し寄せて、学校運営の舵取りに苦心している。しかし、一方で「学校のいままで」を問い直し、「変える」チャンスにもなっており、多様化やデジタル社会化も踏まえた新しい試みが各地で行われていて心強い。
 著者は教育研究を進めながら、東京都杉並区という実践のフィールドを得て、教育委員会スタッフとしてさまざまな教育改革に携わってきた。その経験を基に研究者の視点を持って、これからの教育の在り方を論述している。
 まず、改革の理念について、人生100年、計算機自然(デジタルネイチャー)という時代観を踏まえ、学びを「一斉・一律」から「多様性と一貫性」へと転換させることとして、明治以来のわが国の教育の歴史とともに、区の改革の具体例を紹介。そして、法改正を伴わなくても可能な改革を進めるためには「仕組み」と「慣習・慣行」の両者を変える必要があるとし、学びを支える「人材と組織」「施設・設備」「行財政」について事例も交えながら説明しているので理解しやすい。
 本書の特色は、公教育政策の全体を順序良く理解できることにもあり、教育関係者に薦めたい。また、多数の文献が紹介されており、大いに参考になる。
(1320円 講談社(講談社現代新書))
(大澤 正子・元公立小学校校長)

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