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使える学力の育て方 すべての生徒が自学自走できる授業づくり

18面記事

書評

冨塚 大輔 著
社会で必要な力の素地、中学国語で

 気に掛かっていたことがある。令和3年度全国学力・学習状況調査の児童・生徒への質問紙調査の問い「新型コロナウイルスの感染拡大で多くの学校が臨時休校していた期間中、計画的に学習を続けることができましたか」についての小中格差。「続けることができた」が小学生64・7%に対して、中学生は37・7%にとどまったことだ。
 本書は、中学校教育の真っただ中で、授業実践について語り、中学校教育に対する懸念と不安を払拭してくれた。
 その特徴は、企業人としての経験を生かした「使える学力」を意識した授業、あるいは、指導の在り方を追究している点だろう。「解釈する力」「気づける力」「見通しをもてる力」「関係性を理解できる力」「概念を砕ける力」なども「実社会に出たときの汎用的能力」と整理し、中学校の国語授業でこうした汎用的能力の素地づくりを目指す。
 授業のはじめに単元のゴールを伝え、単元をつなげ、螺旋的に能力をアップさせる。1年間、あるいは3年間のカリキュラムを見通し、一つ一つの授業に意味を持たせる。取り上げるのは説明的文章、文学的文章、古文などや、英語科とのコラボ授業の実践だが、副題にある「自学自走できる授業」のさまざまな仕掛けを、読者は共有することになるだろう。
 中学校教育の可能性を感じさせてくれる一冊である。
(1980円 東洋館出版社)
(矢)

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