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教えから学びへ 教育にとって一番大切なこと

14面記事

書評

汐見 稔幸 著
体験や没頭する時間の重要性説く

 新型コロナウイルスのパンデミックは、私たちに「これまで通り」は通用しないという事実を突き付けた。予測困難な時代、しかもインターネットが浸透し、学校や教師の役割は大きな転換期にある。
 著者は、半世紀ほどにわたり保育・教育に関わってきた教育学者。教師は「知識をどう教えるか」ではなく、「子どもたちの学びをどう育てるか」に転換するなど、新しい学びを構築すべきチャンスにあると問題提起。
 まず、「学び」とは、「脳の中に情報処理の回路が新しくできること」、「教養」とは、「いろいろな知識をより上位の知識とつなげていこうとする姿勢」と定義していて理解しやすい。
 そして、幼児の「わかる」の発達を基に、「人間の促成栽培はできない」「学びは体験から始まる」として、「子どもが感じる世界を豊かに」「『かたる』の復権」「三人称的認識を一人称化する」「問いと答えの間を充実させる」「体験に寄り添い思考力を育てる」などの大切さを説いていく。また、系統性から外れて直感やイマジネーションで新しい回路をつくっていく子どもも存在するとして、「教育」とは「子どもたちが没頭する、熱中する時間をつくること」と言い、新しい学校像と実現したい「学び」の姿を描いている。
 本書には、「深い学び」について考え、意識改革を促す内容が収められている。
(979円 河出書房新社(河出新書))
(大澤 正子・元公立小学校校長)

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