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子どもの放課後支援の社会学

14面記事

書評

鈴木 瞬 著
制度論、組織論として現状を分析

 放課後子どもプラン推進事業(平成19年)をはじめ子どもの放課後の制度化が進んでいる。タテ割り行政や制度の隙間に落ち込んでいた「子どもの放課後」だが、子育て支援の必要性や子どもの貧困等が可視化される中で、これを公的に支援する動きが広がっている。もちろん子どもの自由な時間や空間を大人が囲い込むことへの批判もある。だが、いまの日本ではわれわれのまぶたの裏によみがえるような放課後のひとときを過ごしている子どもたちばかりではない。
 ただ、本書はそうした制度化の是非を問うたり、理想的な放課後支援の在り方を提示したりする啓蒙書ではない。学術書として問いを立て、放課後支援施策を巡る教育と福祉の<越境>とも呼び得る状況を整理し、この視座から「総合的な放課後対策」の実現に向けた支援がどのように実践可能なのかを教育経営的な視点から考察するものである。各章ごとに研究目的と対象と方法があって、制度原理から担当者の意識まで多彩な次元で検討がなされ、本テーマを制度論、組織論として把握するところにオリジナリティーがある。
 法的に保障されている学校教育と異なり、制度的にも曖昧な放課後事業を支える理念や関係者の認識を浮き彫りにすることによって、制度化のビフォー・アフターが見えてくる。理念と実態の乖離や<越境>の課題もあり、やはりマネジメントに期待が寄せられている。
(6600円 学文社)
(元兼 正浩・九州大学大学院教授)

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