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学級経営と授業で大切なことは、ふくろうのぬいぐるみが教えてくれた

14面記事

書評

熱海 康太 著
物語仕立てで初任者の悩みに助言

 評者は現役時代から退職後の今日まで、教育書をかなり読んできたと思っている。しかし、このような本の類書は全く知らない。
 初任者の「花」が日々の仕事の中で悩んでいることを率直に語り、伝説教師の生まれ変わりのふくろうのぬいぐるみ「ふっくん先生」が、対話を通じて具体的な解決策を示す。この二人の会話を通じて、読者は改めて教師の仕事の在り方を建前論や抽象論ではなく、明日の仕事に役立つ情報として得ることができる。
 本書は20章編成で「学級経営編」「授業編」「仕事術編」「人間関係編」「これからの成長編」と分かれていて必要な情報を入手できる。また各章の終わりには、二人の会話のやりとりから生まれた「指導のポイント」も簡潔に整理され理解を助ける。
 例えば、3章の「子どもたちに、何から伝えればいいの?」のポイントの一つに、<学校に来ている理由は、「教科等を学ぶ」「みんなと仲良くできる、を学ぶ」>というのがある。
 「みんなと仲良くできる」とは、言葉を換えて言えば、社会性(上手に人間関係を築いていく)のスキルの獲得になる。このスキルをしっかり身に付けないと、やがて成人してから問題が出てくる。個性も確かに大切である。しかし「みんなと」を培うことこそ、学校教育の最も大切な使命である。このことを肝に銘じさせる良書である。
(2200円 黎明書房)
(庭野 三省・新潟県十日町市教育委員会教育委員)

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