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宿題をめぐる神話 教育改革への知恵と勇気を持つために

18面記事

書評

アルフィー・コーン 著
友野 清文・飯牟禮 光里 訳
功罪を検証、真の学びを問う

 「宿題についての真実」(第I部)、「(証拠がどうであれ)宿題がなくならない6つの理由」(第II部)、「正気を取り戻す」(第III部)と、宿題にこだわった一冊。米国内での宿題に関する迷妄から、目を覚ました様が「正気」である。宿題のない状態にいったん戻し、教育の在り方を見直すというのが著者の立ち位置だ。
 米国内では、国際的な比較調査などで学力が低位にある子どもの現状を打開する一つの手段として、宿題が推奨されている。例えば、教育省発行の冊子「親のための宿題のヒント」を紹介するなど、公立学校の教育問題を宿題によって解決しようとする潮流がある。
 著者はさまざまな調査から宿題が学力向上につながらないことや、学業以外へのメリットもないことを検証していく。にもかかわらず、なぜなくならないのか。「学校の管理者が自分の学校(あるいは学校区)が他に比べてどうかということだけに関心を持つならば、他の学校(学校区)が止めようとするまでは、不必要な宿題をなくそうと言い出すことは難しい。この論理(むしろ非論理)は軍拡競争に匹敵する」とまで指摘するのは興味深い。
 日本では文科省が介入したネット上での宿題の完成品売買禁止は記憶に新しい。「自分で宿題に取り組むことの大切さ」は言わずもがな、であろう。自発に基づく“止まらない学び”をどう創出するか。日本でも、こうした教育に腐心することを望みたい。
(1980円 発行・丸善プラネット、発売・丸善出版)
(矢)

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